第55章 暗闇でも見つけて
「よっぽどアイツのことで頭がいっぱいだったようだな」
「う”……ごめん……それで、なんで呼び出したんだ?」
「それは----」
ドラコは言葉に詰まった。ヒッポグリフから守ってくれたこと、感謝の言葉を言うだけだと言うのに、いざミラに向き合うと何故か言葉が喉に詰まって出なかった。無意識に左手が包帯に巻かれた右手を掴んだ。
「っ、忘れた!お前がバカでノロマのせいだ」
「…はぁ? バカとかノロマとか関係ないだろ!」
「忘れたお前が悪い」
話はここまでだ、と言わんばかりにドラコは振り返って城へ向かって歩き出した。
「あ、ドラコ!ちょっと待ってって!何が言いたかったの?」
「忘れたと言っただろう!それに、お前は後から来い。一緒にいるところを他の奴らに見られたくない」
「あ、うん…そうだった」
ミラはドラコの後を追いかけるのをやめた。少しずつ小さくなっていくドラコの背中。
「ドラコ!」
ミラは叫んだ。ドラコは足を止めて振り返った。
「ありがとう、ドラコ!」
ミラは大きく手を振った。ドラコは手をふり返す素振りは見えず、また城へ向かって歩き出した。