第55章 暗闇でも見つけて
「それに、お前があのままロングボトムを傷つけたら、面倒になると思っただけだ」
「ふーん。じゃあ、助けてくれたわけじゃないんだ?」
「……“助けた”なんて言葉を勝手に使うな」
「へぇ、図星?」
ミラが意地悪く笑うと、ドラコは鼻を鳴らした。
「ほんと、減らず口だな。ロングボトムに向けてた顔とは大違いだ」
「…そのことは、もう言わないで」
ほんの少し声が揺れたのに、すぐ気づいた。ドラコの目が、鋭さを失って柔らかくなる。
「……わかった」
その一言に、ミラは自身でも気付かぬうちに息を吐いていた。
二人は静かに湖の方を見ながら、一言も話さなかった。柔らかい風が二人の間を抜けていき、ミラは杖をポケットに仕舞った。
ミラは横にいるドラコをこっそりと見た。ドラコは真っ直ぐと湖の方を見ており、何かを考えているように見えた。
口元が、ゆるりと緩んだ。それに気がついたのか、たまたまだったのか、ドラコがこちらを向いたことで、ドラコは眉を顰めた。
「なんだ」
「ドラコと友達になってよかったと思って」
「----は?」
一瞬理解できなかったドラコが、素っ頓狂な声を上げた。
「いざって時は来てくれる。私の目に狂いはなかったなって」
「…今日はたまたまだ」
「…そう?----あ、そういえば話したいことがあるって言ってなかった?」
「今頃思い出したのか?」
ドラコは腕を組んで、呆れた視線をミラに寄越した。
「お前、僕がこの間呼び出したのに来なかっただろう」
「…あ」
やっぱりな、とドラコはため息をついた。