第55章 暗闇でも見つけて
「あなたってとっても美人なの」
「…ビジン?」
ミラはハーマイオニーが言っていることが全く理解できなかった。何もわかっていない様子のミラに、ハーマイオニーはやっぱりと思った。
「自覚がないだけで、相当…ううん、あと数年もすればもっといろんな人に声をかけられるわ」
「…それと美人がなんの関係が?」
「もう、あなた本当にわからないの? つまり、あの人たちはあなたに構ってもらいたいのよ!」
「----なんで?」
全くミラは理解できなかった。構って欲しい理由に顔が美人なことが何故大事なことなのか、どう考えてもミラの頭の中で結びつかなかった。ハーマイオニーも頭を抱えて、ブツブツと何かを呟いていた。
「わかってたわ、ミラが人の好意に鈍いこと。ああ、心配だわ。これ以上美人になってしまったらどうすればいいの?絶対に言い寄る男が増えるわ。どう自覚して貰えばいいのかしら?」
ミラはふと思い出した。前に顔を近づけすぎちゃいけないと、ハーマイオニーに言われたことを。そもそも自分が本当に美人なのかわからなかった。そのせいで、ミラはきっとハーマイオニーが盛って言っているのだろうくらいにしか思っていなかった。
「つまり、ハーマイオニー」
ブツブツ呪文を呟いているようなハーマイオニーの顎に指を添えて上にあげて、顔を覗き込むように見た。
「こう言うことしちゃダメってこと?」
「!」
ポッとハーマイオニーの頬が赤くなると、ミラはニンマリと笑った。普段近くで見ることのないアメジストの瞳は、引き込まれそうなほど深い色をしているのがはっきりわかった。
「----そういうの、どこで覚えてくるわけ?」
ハーマイオニーはサッとミラから離れると、ミラはまだ意地の悪い顔をしていた。
「ハリーに透明マントを借りて城を歩いている時。わざと物音を立てると慌てて逃げて面白いよ」
ミラは口元に手を当てて笑いを堪えようとした。ハーマイオニーは呆れてミラを見た。
「随分楽しんでいるみたいね」
「今度ハーマイオニーも一緒に来る?」
「いいえ、遠慮するわ」
顔の話は終わったようだと、ミラは思った。