第8章 真夜中の決闘
「わたしはあなたの名誉の為にここに来たってこと。だってあんな口約束であなたが本当に今夜トロフィー室に来るなんて、信じられない」
「ぼくの名誉だと?」
「別に今夜来なくてもいいけど、その代わり明日からあなたのこと、臆病者のドラコってずーっとこれから先、そう呼ぶことにするから」
「臆病者だって?ぼくが?」
ドラコは不愉快に顔を歪めた。
「はっ…ポッターも随分凶暴で過保護な友人をお持ちのようで気の毒に思うよ…っ」
横腹にグッと杖を押し付けられて、ドラコは口を閉ざした。忌々しくミラを見た。またあの冷たいアメジストの瞳が自分を貫き、早くどっか行ってしまえとドラコは思った。
「ちょっと!なんであんたみたいなやつがここにいるの?!」
ヒステリック気味のキーキーした声が、ミラとドラコの背後から聞こえ、ドラコは声の主がミラをどうにかしてくれるだろうと、期待を込めた目で振り返った。
「やぁ、パーキンソン」
「ドラコ、なんでこんな奴といるの?」
「それが付き纏われて困っているんだ」
「まぁ!」
勝ち誇ったようにミラを見ると、ミラは呆れた目でドラコを見た。
「ねぇ、ドラコが迷惑だって言ってるの聞こえなかったの?早く離れてよ!」
ミラはやっとパンジー・パーキンソンに視線を向けると、パンジーはこっちを向いたミラを睨みつけた。ミラはクスッと笑うと、ドラコの耳に顔を寄せて、ドラコにしか聞こえない音量で囁いた。
「じゃ、また今夜」
パンジーがまた何か喚いていたが、ミラはスルリと杖をローブの中にしまい、まるでパンジーなど見えていない振る舞いで立ち去った。
「な、な、なんなの!あの女!無視なんかしちゃって!ドラコ、あの女に何言われたの?!」
キーキーと喚くパンジーを他所に、ドラコは今夜決闘へ行くか行かないか、悩みが生じ出した。もちろん最初から行くつもりなど、はなからなかったのだ。ハリー達を陥れてやろうと思っていたが、どうやらミラについて、考えを改めなければいけないと思った。
「誰が臆病者だ」
行かなければ今後自分を臆病者呼ばわりする、ドラコのプライドがそれだけあってはならないと、広間を出て行くミラの後ろ姿を睨みつけた。