第8章 真夜中の決闘
三人は食事を終えると、ミラは二人に先に寮に戻るように言った。
「ちょっとマクゴナガル先生と話がしたいことがあるんだ、先に行ってて」
ミラは二人に手を振ると、ハリーとロンは広間から出て行った。二人の背中が見えなくなると、ミラは席を立ち、スリザリン寮のテーブル座っているドラコの元へ向かった。
ドラコは向かいにクラッブとゴイルを座らせ、ハリーの事を馬鹿にするような話をして盛り上がっていた。
「楽しみだな、ポッターのやつが明日の朝ここを出て行くのが。見送りぐらいしてやった方がいいと思わないか…おい、どうした、お前ら?」
盛り上がって話していたのに、急に二人は静かになり、ドラコは不思議そうな顔で問いかけた。二人の視線は自分ではなく、自分の背後だと気がつく前に、ポンっと自分の肩に何かが置かれた感覚がした。
「やぁ、ドラコ。さっきぶりだね」
ミラはドラコの肩から手を離さず、流れるようにドラコの隣に座った。すると、ドラコは自分の横腹に何かを突き刺されていると気付き、ソッとテーブルの下を見ると、今日の午後、飛行訓練の時に見た同じ杖が、自分の横腹に向けられていた。
「っ…なんのつもりだ、グローヴァー」
あくまで冷静に、ドラコはヒヤヒヤしながらも忌々しくミラを見た。クラッブ、ゴイルに視線を向けると、席を立とうとする二人に首を横に振って見せた。二人は渋々席に戻り、ミラを睨みつけた。
「なんのつもりも何も、決闘の話のことさ」
ミラは気にすることもなく、ドラコに話しかけた。
「それならさっき決めたはずだ。口出ししないでもらいたいね」
「別にあなたとハリーの決闘について口を出すつもりはないさ。ただ本当に今夜、あなたが来るかどうか確かめたくってね」
「もちろん行くさ」
「どうかなぁ…」
ミラはニヒルに笑いながら、ドラコを見た。ドラコは自分に不躾に見てくるミラにイライラしたが、杖を横腹に突き立てられ、身動きすら満足にできないことが、さらにイラつかせた。