第55章 暗闇でも見つけて
図書室の扉が見えるところまで来ると、向かいからスリザリンの上級生たちが歩いてきた。ミラは自然と眉間に皺がよった。ハーマイオニーが心配そうにミラに視線を送ると、ミラはそれに気がついてハーマイオニーになんとか笑ってみせた。
ハーマイオニーの顔には、「何を言われても無視よ、無視!」と書いてあるような顔をしていた。
「おい、グローヴァー。お友達にまた占ってもらったか?」
「図書室行くんだろ? “スリザリン生の見分け方”でも調べるのか?」
「俺たちの中に、例のイケメンがいるかもよ?」
「ま、探してる間にまた誰かに水ぶっかけるんじゃないか?」
ゲラゲラとスリザリン生たちの下品な笑い声が廊下に響き、ミラはこっそりポケットへ伸ばしかけた指先を、ハーマイオニーにぎゅっと掴まれた。
「ダメ、ミラ! 今やったらあなたが罰則を受けるのよ…!」
ハーマイオニーが首を横に振る。喉の奥で煮えたぎる怒りを押し込めるしかなく、ミラは眉間に皺を寄せた。
「そこ! なんの騒ぎだい?」
突然、パーシーの鋭い声が廊下に響き、足音がこちらへ向かってくる。ミラは大きく、深い、諦めのような溜息を吐いた。スリザリン生たちはパーシーを見るなり、わざとらしく肩をすくた。
「騒ぎ? 俺たちは“なぁんにも”してないぜ?」
「そーだよ、ただ通りかかっただけだって。なぁ、みんな?」
バカにしたような口調で言い残し、にやついたままひらひら手を振って立ち去っていった。
パーシーは眉をひそめ、去っていった彼らとミラたちの様子を見比べた。
「……何があったんだ? 二人とも」
ハーマイオニーがすぐに答えた。
「からかわれただけよ、パーシー。ミラは何もしていないわ」
「本当かい?」
パーシーは半ば疑うようにミラをじっと見る。ミラはツンと顔を逸らした。