第8章 真夜中の決闘
ドラコがいなくなると、ハリーとミラは魔法使いの決闘とは、仲介人とは一体なんだとロンに問い詰めた。
「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに僕が闘うっていう意味さ」
と、ロンは気軽に言って、すっかり冷めてしまった食べ掛けのパイを口に入れた。
「え」
「ハリーが…死んだら…?」
ハリーとミラの顔色が変わったのを見て、ロンは慌てて付け加えた。特にミラは今からドラコを呪わんと、杖を手に握り席を立とうとしていた。
「死ぬのは、本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ!」
ミラは立ち上がるのをやめ、静かに席に座った。
「君とマルフォイだったら、せいぜい火花をぶつけ合う程度さ。マルフォイは、きっと君が断わると思っていたんだよ」
「もし、僕が杖を振っても何も起こらなかったら?」
「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを喰らわせればいい」
「ハリー、拳を打つときは脇を閉めて真っ直ぐ打つんだ」
ロンの代案に、ミラも頷いてハリーに拳の打ち方を見せた。
そこへ、「ちょっと、失礼」いう声がした。三人が見上げると、今度は、ハーマイオニーがいた。
「まったく、ここじゃ落ち着いて食べることもできないのかな?」
ハーマイオニーは、ロンを無視してハリーに話し掛けた。
「聞くつもりは無かったんだけど、あなたとマルフォイの話が聴こえちゃったの」
「聞くつもりがあったんだろ」
噛み付くようにロンは言った。
「夜、校内をウロウロするのは絶対ダメ。もし捕まったらグリフィンドールが何点減点されるか考えてみて。それに捕まるに決まってるわ。なんて自分勝手なの」
「まったく大きなお世話だよ」
ハリーはハーマイオニーから顔を背けて言い返した。
「バイバイ」と、ロンが止めを刺すと、ハーマイオニーはミラをチラリと一度見たが、何も言わず怒って立ち去ってしまった。
「なんなんだ、本当に」
「…心配してくれたんじゃない?」
「心配なのは僕達じゃなくて、寮の得点だろ」
イライラしながらロンは言うと、ミラはまだ自分のお皿に残っていたローストチキンにフォークを刺した。