第54章 死にたがりの囁き
秘密の部屋の更に奥の部屋にたどり着くと、床にミラとジニーが倒れていたのを見つけた時、僕は生きた心地がしなかった。二人に駆け寄ると、ジニーは眠っているようだったのに対して、ミラの顔はまるで死人のように白くなっていた。手を掴むと、まるで氷のように冷たかったことを覚えている。
「馬鹿な小娘だ、自分より他人を優先するなんて」
と、トムが僕の目の前に現れた。
トムはこれまでのことを僕に話し、ジニーが継承者だったことを明かした。
「じゃあ、どうしてミラまで巻き込んだ?」
「ミラに関しては偶然だ。しかし、君の幼馴染であり、家族のように思っていると知った時、興味が湧いた」
トムはそこで一度話しを切り、地面に倒れているミラを見下ろしながら話した。
「----でも、それだけじゃない。僕たちは似ていた。生い立ちも、育ちも----僕にとって初めて共感できる人物だったと言える。彼女もそうだった。呆気なく心を開いてくれたよ」
と、怪しい微笑みを浮かべているトムに、僕はゾッとした。
「だから殺すのは惜しいと思った。それに、彼女には素質がある。僕の元に来れば、闇の魔術だって思いのままに扱えるようになっただろうに----」
「だけどミラは断った」
僕は思わずニヤリと笑ってしまった。
「本当に残念だ。変に残した良心が自分を苦しめているとも知らない。そのせいで自分から死を選んだ----愚かとしか言いようがない」
「それは違う!ミラは痛みを知っている!知ってるからこそジニーを生かそうとした!君は絶対できない、偉大なことだ!」
「----ハッ、偉大ねぇ。それは勘違いだ、ハリー・ポッター」
リドルは不敵な笑みを見せた。