第54章 死にたがりの囁き
【ハリー視点】
ミラと出会った時、お互い家族のいないもの同士、気が合うのに時間なんて掛からなかった。
ダドリーにいじめられていた僕の前に、ミラは突然現れて、ダドリーを拳ひとつで立ち向かった姿は、今でも忘れることはない。自分と同じくらい細い体のどこに、デブのダドリーを追い払える力があったのか----ミラは僕にとってヒーローのような存在だ。
それはホグワーツに来てからも同じで、マルフォイの子分のような存在のクラッブとゴイルにも臆した姿を見たことがない。むしろ、一年生の時に喧嘩に勝ったことをネビルから聞いた時、やっぱりミラは強いと思った。
賢者の石を守りに行った時も、起きてしまったトロールを一人で立ち向かって僕を先にかせてくれた。そのあと、大怪我をしたと話を聞いた時も、ミラはなんともなさそうにしていたけど、流石にあの時は僕も怒った。
でも、ミラなら大丈夫、僕より強いから----なんて、いつから思っていたんだろう。
だから ミラのボガートがトム・リドルになった時、心臓が凍りついた。
トム・リドルがミラに話しかけると、ミラは杖を落として動けなくなってしまった。
慌ててミラに駆け寄ると、今まで見たことないくらい真っ青な、ショックを受けているミラの顔を見たのは、きっとこれが初めてだ。
ミラが談話室に戻ってくると、話しかけよとした時、ミラは女子寮へ一目散に走っていった。
「今はそっとしておきましょう…」
と、ハーマイオニーに言われ、僕は早く話したい気持ちを燻らせながら、ミラを待つことにした----結局、ミラはそのあと、部屋から一歩も出てこなかった。
僕は、秘密の部屋でトム・リドルと話したことを思い出していた。