第53章 潜む闇
授業は順調に進んだ----とは言い難かった。
ネビルの縮み薬がオレンジ色だと気が付いたスネイプ先生が、クラスのみんなに聞こえるようにネチネチとネビルに嫌味を言った。もちろん、材料をしっかりと確認していなかったネビルが間違えたのがいけないが、スネイプ先生の嫌味はネビルを震え上がらせるには十分だった。
スネイプ先生は授業の最後に、ネビルのヒキガエルに薬を飲ませると告げた時、ミラは顔を顰めてスネイプ先生を睨み付けた。効果は何もなかったが。
それからハーマイオニーはスネイプ先生にバレないように、こっそりネビルに指示した。ミラその間、二人の様子をこっそり見守りながら、残っていた材料を片付けたり、使った柄杓を教室の隅の方にある医師の水盤で洗った。
「----今日の授業が全部終わったら、裏庭に来い」
ガーゴイル像の口から吐き出される氷の様に冷たい水で柄杓を洗っていると、ドラコが自分の柄杓を持ってミラの隣に並んだ。声は抑えられていて、ミラはチラリとドラコを見た後、柄杓を洗っている手元に顔を戻した。
「わかった」
ミラも聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言った。
「それ、貸して」
ミラはドラコの返答を待たずに柄杓を引ったくって洗った。
「その腕じゃ上手く洗えないだろうし」
「…わかってるじゃないか」
ミラは表情を変えず、ドラコの柄杓も洗って、ドラコにすぐ返した。ドラコは何か言いかけようとしたが、他のスリザリン生が来たことで、柄杓を受け取って自分のテーブルに戻ってしまった。