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【HP】怪鳥の子

第53章 潜む闇


 時計の針が十二時を過ぎた頃、授業が半分ほど終わった頃にドラコが姿を現した。右手にはまだ包帯を巻いて吊っており、ふん反り返って地下牢教室に入ってきた。その様子はまるで、激しい戦いに生き残った英雄気取りのように見えた。

「ドラコ、どう?酷く痛むの?」

 と、パンジー・パーキンソンがすかさずドラコに取ってつけたような笑顔で問いかけた。

「ああ」
「まぁ、なんて痛々しい…」

 ドラコは勇敢にも耐えていると言ったような顔をしかめた。パンジーは口元に手を当てて、お気の毒にといった顔をした。しかし、パンジーがむこうを剥いた途端、ドラコがクラッブとゴイルにウィンクしていたのをミラは見てしまい、相変わらずの子悪党ぶりに呆れ果てた。

「座りたまえ、さあ」

 と、スネイプ先生は何事も無かったかのように言ったのが聞こえると、ミラはこれが自分だったなら罰則を課したに違いないだろうと思った。スネイプ先生は今年もドラコには特段甘いようだ。スネイプ先生がスリザリン贔屓なのは今に始まった事ではないが、見ていて気持ちのいいものではない。嫌でも孤児院のミス・メアリーが脳裏にチラつくのだ。ミス・メアリーもお気に入りの子供にはかなり贔屓をしていた。例えば、寄付された服でも、お気に入りの子供には比較的綺麗なのを渡していた。自分にはツギハギだらけの服や、穴が空いた服ばかり与えられたなど----数をあげればキリがない。
 だからミラは余計にスネイプ先生が大嫌いだった。


 ドラコはハリーとロンのすぐ隣りに自分の大鍋を置いた。きっと碌なことが起こらないだろうとは確信していたが、ハリーたちを手助けできるほど近くなかった。 ハリー、ロン、ドラコの三人が揃えば、まず何も起きないことがない。今もドラコの顔を見れば、意地の悪い顔をしている。

「ミラ、自分の魔法薬に集中した方がいいわ」
「----あの二人、耐えられるといいけど」

 ハーマイオニーに注意され、ミラは死んだイモムシを刻むのを再開した。
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