第52章 ヒッポグリフ
意識が遠のくことはなかったが、疲労感が一気にドッと押し寄せてきた。ミラは少量の鼻血をローブの袖が残っている方で拭い取った。ハリーとロンに肩を貸してもらって立たせてもらうと、ミラはサーブルがいないか首輪だけを動かして探した。サーブルはそう遠くに入っておらず、ジッとこっちを見つめていた。
ハリーとロンに頼み、サーベルのところまで一緒に歩いた。
「助けてくれて、ありがとう」
ミラはサーベルに微笑むと、サーベルは尖った頭をミラに擦り付けてきた。隣にいたロンだけが一瞬体をこわばらせるのが、横から伝わり、ミラは笑いそうになった。ハリーはバックビークのおかげで、怖いという意識はなくむしろサーベルの頭を撫でていた。
しかし、そのあとは大変だった。生徒たちは大きなショックを受け、みんな放牧場を後にした。ミラはハリーとロンに肩を貸してもらいながら、坂をゆっくり登った。少し上を歩いている生徒たちの声が聞こえてきた。
「すぐにクビにすべきよ!」
と、パンジーが泣きながら言っていた。
「マルフォイが悪いんだ!」
と、ディーン・トーマスがキッパリ言った。
スリザリンの生徒たちは、全員ハグリッドを罵っていたし、グリフィンドールの生徒たちはドラコを非難する声が上がっていた。
やっと全員が誰もいない玄関ホールにたどり着くと、「大丈夫かどうか、私見てくる!」と、パンジーはそう言って大理石の階段を駆け上がって行った。
「ミラ、あなたも医務室に行くべきよ」
ハーマイオニーが心配そうにミラに言った。
「大丈夫さ、これくらい。休めば元気になるから、早く談話室に行こう」
「でも----」
ミラは医務室に行きたいとは思わなかった。行けばまたマダム・ポンフリーに心配され、またマクゴナガル先生に心配を掛けるのが嫌だった。何より、力を使ってしまったことがバレれば、またマクゴナガル先生から厳しい言葉をもらうかもしれない。バレませんように----と、ミラは叶うことのない願いを願った。