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【HP】怪鳥の子

第52章 ヒッポグリフ


「かならず、ヒッポグリフのほうが先に動くのを待つんだぞ」それが礼儀ってもんだろう、な?こいつの傍まで歩いて行く。そんでもってお辞儀する。そんで、待つんだ。こいつがお辞儀を返したら、触ってもいいっちゅうこった。もし、お辞儀を返さなかったら、素早く離れろ。こいつの鉤爪は痛いからな----よーし----誰が一番乗りだ?」
「はい!はいはい!私やってみたい!」
「おお、さすがだなミラ!こっちこいや」

 先ほどドラコたちから目を離してはいけないと思っていたのに、どうしてもヒッポグリフへの興味に引かれ、気が付けば元気良く手を挙げて放牧場の柵を乗り越えていた。

「僕もやるよ、ハグリッド」
「偉いぞ、ハリー!」

 流石にミラ一人に頼ってばかりではいけないと思ったのか、ハリーも放牧場の柵を乗り越えてミラの隣に立った。途中ラベンダーとパーバティがお茶の葉占いのことで騒いでいたが、ハリーは無視した。

「よーし、そんじゃ----サーブルとバックビークとやってみよう」

 ハグリッドは漆黒のヒッポグリフと、灰色のヒッポグリフの鎖を解き、群れから引き離して革の首輪を外した。
 放牧場の柵の向こう側では、クラス全員が息を止めているかのように二人を見つめていた。

「落ち着けよ、二人共。目は逸らすな。なるべく瞬きもするな----ヒッポグリフは目をしょぼつかせる奴を信用せんからな----」


 漆黒のヒッポグリフ、サーブルが巨大な尖った頭をミラの方に向け、猛々しいオレンジ色の目を片方だけでミラを睨んできた。なんて美しい生き物なのだろうと、ヒッポグリフに近付いたことで、ミラはそう思った。相手を見定める様な視線は、どこか自分に似ているような気もした。

「そうだ、ミラ、いいぞ----それ、お辞儀だ----」

 ミラは言われた通りに頭をヒッポグリフに向けてお辞儀した。無防備な首の後ろを晒すことは、中々の緊張を感じさせた。いつまでお辞儀すればいいかもわからず、もしかすると、自分のお辞儀に納得しないヒッポグリフに引っ掻かれるかもしれない----今になって心臓がバクバクと暴れ出した。
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