第52章 ヒッポグリフ
胴体と後ろ脚、そして尻尾はまるで馬のようだったが、前脚と羽、そして頭は巨大な鳥そのものだった。鋼のように冷たい嘴は鋭く湾曲し、ギラついたオレンジ色の目はまるで鷲のように鋭かった。前脚の鉤爪は半フィートはあろうかという大きさで、一目で危険な力を秘めているとわかるほどだった。
それぞれの首には分厚い革製の首輪がつけられ、そこから伸びた長い鎖の端を、ハグリッドがその大きな手でひとまとめに握りしめていた。ハグリッドはまずその生き物たちを先に歩かせ、自分はその後ろを小走りでついていきながら、放牧場の中へと入ってきた。
「ドウ、ドウ!」
ハグリッドが大声で掛け声を上げ、鎖を軽く振ってその生き物を生徒たちが立っている柵の方へと追い立てた。やがてハグリッドが生徒のそばまでやって来て、その生き物を柵にしっかりと繋ぐと、周囲の生徒たちは思わず一歩、二歩と後ずさる中、ミラは目をキラキラさせて近付いた。
「ハグリッド、この生き物は?」
「ヒッポグリフだ!美しかろう、え?」
「とっても!」
「やっぱりお前さんにゃわかるか!」
ミラは興奮を隠しきれない様子で、色違いのヒッポグリフたちを見回した。嵐の空のような灰色、赤銅色、赤ゴマの入った褐色、つやつやした栗毛、漆黒などに彩られていた。
「やっぱりミラって、危険生物が好きなのかな…ドラゴンの時だって、喜んで世話してたぜ。ハグリッドみたいにならないといいけど」
「うん、多分----というか、そうかも」
ロンはこっそりハリーに耳打ちした。ハリーも少し困ったような苦笑いをした。それでも、ハリーは少しだけハグリッドのいうことがわかる様な気がした。
「そんじゃ、もうちっと、こっち来いや----」
誰も行きたがらない中、ハリー、ロン、そしてハーマイオニーがミラの隣に並んだ。
「まず、イッチ番先に《ヒッポグリフ》について知らなければならねえことは、こいつらは誇り高い。すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは。絶対、侮辱してはなんねえ。そんなことをしてみろ、それがお前さんたちの最後の行動になるかもしんねえぞ。」
ドラコはフラッブとゴイルと何かヒソヒソと話しており、ハグリッドの話を聞いていない様だった。いったい何を企んでいるのか、ミラはドラコたちから目を離さない様にしておかないとと思った。