第52章 ヒッポグリフ
『占い学』の教室から『変身術』の教室への移動は、かなりの時間を要してしまった。マクゴナガル先生の教室に着く頃にはギリギリの時間だった。ハリーは人目を気にして一番後ろの席に座ったが、それでも居心地悪そうにしている様子が見てわかった。教室にいる同級生たちが、さっきの『占い学』でのハリーの結果に、いつ何時ばったり死ぬかわからないと言わんばかりに、チラチラと盗み見していたからだ。
ミラはハリーの横の席に着くと、鬱陶しそうにハリーをチラチラ見る同級生たちを睨みつけたが、効果はあまりなかった。マクゴナガル先生が、アニマージ(自由に動物に変身できる魔法使い)について話しているのを、なんとか集中して聞こうとしても、誰かしらが後ろを振り返るせいで全く集中できなかった。
そのせいで特に大好きな『変身術』の、マクゴナガル先生の授業に集中できないことが、ミラを余計にイライラする気持ちにさせた。
先生がみんなの目の前で、目の周囲にメガネと同じ形の縞があるトラ猫に変身したときも、誰もそれを見ていなかった。
「全く、今日は皆さんどうしたんですか?別に構いませんが、私の変身が教室で拍手を浴びなかったのはこれがはじめてです」
と言ったマクゴナガル先生は、ポンという軽い音とともに元の姿に戻るなり、教室中を見回した。
「くだらない占いを信じてるんですよ、みんな。はっきり言って、とっても迷惑してます」
ミラは静かに立ち上がり、辟易した様に教室を見回しながら言った。
「先生----」
ハーマイオニーが手を挙げた。
「私たち、今日初めて『占い学』の授業を受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで、それで----」
「ああ、そういうことですか」
と、マクゴナガル先生は顔を顰めた。
「ミス・グレンジャー、それ以上言わなくて結構です。ミス・グローヴァーもお座りなさい。それで、今年は一体誰が死ぬことになったのですか?」
みんながマグコナガル先生を見た。ミラも席につき、マクゴナガル先生の言葉に耳を澄ませた。
「…僕です」
と、ハリーが静かに答えた。