第51章 占い学
北塔にたどり着くまでにはかなり時間がかかった。途中、絵の中の住人である「ガドガン卿」と名乗るずんぐりとした小さな騎士に道を教えてもらい、ようやく占い学の教室に到着することができた。
そこには既に、大多数の生徒が集まっていた。
占い学の教室入ると、どこかの屋根裏部屋と昔風の紅茶専門店を掛け合わせたようなところだった。部屋には、二十卓以上の小さな丸テーブルがぎっしりと並び、それぞれの周りには更紗張りの肘掛け椅子や、ふかふかの丸椅子が置かれていた。深紅のほの暗い明かりが部屋を包み、すべての窓のカーテンはしっかりと閉められている。ランプの多くは暗赤色のスカーフで覆われ、柔らかな光を放っていた。
蒸し暑さに息が詰まりそうだった。暖炉の上には雑多なものが積まれ、火にかけられた大きな銅のヤカンから、むせ返るほど濃厚な香りが立ちこめていた。
「おぇ、息苦しいな、この部屋…」
元々少し緩めていたネクタイを、ミラはもっと緩めた。
「先生はどこだろう?」と、ハリーは言った。
空っぽの教室を見回していると、暗がりの中から突然声がした。霧の彼方から聞こてくるような、か細い声だった。
「ようこそ。この現世で、皆さまにお目に描かれて嬉しゅうございますわ」
トレローニー先生は、大きなメガネを掛けて、そのレンズが先生の目を実物より数倍も大きく見せている痩せた女性で、スパンコールで飾った透き通るショールをゆったりと纏っていた。折れそうな首から、鎖やビーズ玉を何本もぶら下げ、腕や手は腕輪や指輪で肌が見えず、大きな眼鏡のレンズのせいで、トレローニー先生の目は実物より何倍も大きく見えた。
「お掛けなさい。私の子供達よ。さぁ」
と、先生の掛け声で空いている丸椅子に、丸テーブルを挟んでミラとハーマイオニーは肘掛け椅子に腰掛けた。ハリーとロンはその隣の椅子に座った。
「『占い学』にようこそ。私が、トレローニー教授です。多分、私の姿を見たことはないでしょうね。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば降りて参りますと、私の『心眼』が曇ってしまいますので」