第7章 飛行訓練
ミラもその叫びに混じって「上がれ!」と叫ぶと、箒はミラの手に吸い込まれるように飛び上がり、手の中に収まった。嬉しくなってパッとハリーを見ると、ハリーの手にも箒が握られていた。
「やるじゃん、ハリー!」
「ミラもね!」
二人が喜びあっていると、まだ周りで「上がれ!」と叫んでいる声が聞こえ、あたりを見回すと、箒を手にしている生徒はそんなにいないことに気が付いた。ハーマイオニーの箒は地面を転がっただけで、ネビルの箒はピクリとも動く気配がない。
チラリとドラコの様子を伺ってみると、もちろんあれだけクィディッチの自慢話をしていただけあって、手には箒が握られていた。しかしマダム・フーチが生徒達の列の間に入り、箒の握り方を直していると、ドラコの握り方がずっと間違っていたと指摘され、ハリーとロンは大喜びした。ミラもクスッと口に手を押さえて笑いを押さえていると、たまたま目があったドラコがこっちを睨んできた。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴って」
マダム・フーチが言いました。
「箒をぐらつかないように押さえ、二、三フィートぐらい浮上して、それからすぐに少し前屈みになって降りるんですよ。笛を吹いたらですよ、3、2…」
その時、マダム・フーチの笛の音が鳴る前に、ネビルの箒が高く、コルク栓が瓶から弾け飛んだように飛んで行ってしまった。マダム・フーチがネビルに注意するが、ネビルはグングン離れて行く地面を見下ろして真っ青な顔になり、とてもじゃないがマダム・フーチの声が届いているとは思えなかった。ネビルは悲鳴を上げると箒から滑り落ちたのが見えた。
ガーン ---- ドサッ、ポキッという嫌な音を立てて、草の上に落ちたネビルは、草地にこぶが出来たかのように地面に突っ伏していた。空に取り残された箒はさらに高く上がり、そして禁じられた森の方へ向かって飛んでいき、見えなくなってしまった。
マダム・フーチはネビルに素早く駆けつけると、手首が折れていることに気がつき、早々とネビルを連れて医務室へ行ってしまった。帰ってくるまでのその間、誰も箒には乗ってはいけないと注意を残して。
そして二人がもう声の届かないところまで行った途端、ドラコが大きな声で笑い始めた。