第7章 飛行訓練
しかしタイミングがいいのか悪いのか、校内のいざこざがをすぐ見つけ出すマクゴナガル先生がサッと現れた。ミラはスッと背筋を正し、こっそり髪を手櫛で直した。
「どうしたんですか?」
「先生、マルフォイが僕の《思い出し玉》を盗ったんです」
「見てただけですよ」
ドラコは顔を顰めて、すぐに思い出し玉をテーブルに戻し、クラッブとゴイルを従えて、スルリと蛇のように逃げていった。ハリーとロンも煮え切らないのか、席に静かに戻った。
マクゴナガル先生も立ち去るのを見送ると、ミラは二人にコソッと話しかけた。
「残念だったねぇ」
ニヒルに笑うミラに、二人はミラを軽く睨んだ。
「いつかあのムカつく顔に青あざを作ってやるさ」
ロンはオートミールを口に掻き込みながら不機嫌に言った。ハリーもミートパイを口に押し込みながら、「片方ずつやろう」と言い出した。
・・・・・
その日の午後三時半、ミラたち三人は、グリフィンドール寮生と一緒に、はじめての飛行訓練を受けるために、正面階段から校庭へと急いだ。よく晴れて、足下の草が波立つ少し風のある日で、傾斜のある芝生を下り、平坦な芝生のところまで歩いて校庭を横切って行くと、校庭の向こう側に『禁じられた森』が広がっていた。
スリザリン寮生はすでに到着していて、二十本の箒がグラウンドに整然と並べられていた。ハリーとミラは、双子のフレッドとジョージが学校の箒のことをあまりよく言っていなかったことを思い出した。高い所に行くと震え出す箒とか、どうしても少し左に行ってしまう癖のあるものとかが有るという。
教官のマダム・フーチが来ると、彼女は白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしていた。
「なにをボヤボヤしてるんですか?皆んな箒の傍に立って。さあ、早く」
と、マダム・フーチにどやされ、みんなは慌てて箒のそばに並んだ。
ハリーが不安そうに自分の箒を見ているのとは逆に、ミラはどんな箒でもいいから、早く空に飛んでみたいとワクワクしていた。
「右手を箒の上に突き出して」
と、マダム・フーチが声を掛けました。
「そして、『上がれ!』と言います」
「上がれ!」
マダム・フーチの合図で、一斉にみんなが叫んだ。