第7章 飛行訓練
それぞれが思う中、ついに木曜日がやってきた。朝食をとりに大広間へ行くと、ハーマイオニーは図書館で借りた『クィディッチ今昔』で仕入れた飛行のコツをウンザリするほど話しまくっていた。ハリー達はなるべく離れたところに座った。ミラはチラッと様子を伺うと、ネビルだけがハーマイオニーの話を聞いていて、それをしっかり理解しているのか疑わしいところだ。
その話の途中にフクロウ便が届き、ハーマイオニーの講義が中断されると、皆んなホッとした様子を見せた。
「おはよう、ノクチュア。それにヘドウィグも」
ミラとハリーのフクロウは、ハグリッドの手紙以降、一通も手紙を持ってこないことは、きっと数人は気が付いているだろう。でもグリフィンドール寮で誰もそのことについて言わないのは、二人に両親がいないことを知り、気を遣ってくれてるからだ。
ノクチュアとヘドウィグは時々フクロウ便の時間になると、皆んなのフクロウに混じってミラ達の元へやってくる。ヘドウィグはハリーの食べているパンを齧りにくるし、ノクチュアは撫でてもらいたいのか、ジッとミラを見つめてホーっとひと鳴きする。
ミラは色の混じった柔らかい毛に手を滑らせると、ノクチュアは甘えるように頭を手に押し付けてくる。その柔らかい羽毛に、ミラは夢中になって撫でまわした。
「〈思い出し玉〉だ!」
ネビルの声が聞こえ、ミラは首だけを向けた。
「婆ちゃんは、僕が忘れっぽいことを知ってるから。何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだ」
ネビルが言うには、この〈思い出し玉〉は握ることによって中の色が変化する。早速ぎゅっと握ってみせると、玉は突然赤く光だした。
「赤い色だと、何か忘れてるってことなんだけど…」
言わずもなが、ネビルは何を忘れたのかすら忘れている様子で、みんなが少し呆れてネビルを見ていると、グリフィンドールのテーブルの傍を通り掛かったドラコが、その玉を後ろから引ったくった。
ハリーとロンが弾けるように席から立ち上がり、ミラはノクチュアを撫でながら様子を見守ることにした。何故ならハリーとロンは、ドラコと喧嘩をする口実はないかと心のどこかで待っていたのだ。止める理由はなかった。