第41章 深まる影
「そりゃ、最高の先生でしょうよ。自分たちを贔屓してくれるんだから」
ミラは鍋をかき混ぜながら話した。隣にいたハリーが静かに名前を呼んで止めようとしたが、ミラはクスクスと、何が面白いのか笑い続けていた。
「そもそも、学生の半分以上に嫌われてる先生が校長になるなんて、支持した理事たちの頭も疑うよ」
教室がシーンと静かになった。グツグツ煮えている鍋の音しか聞こえず、ハリーは今、スネイプ先生がどんな顔をしているのか、絶対に今見てはいけないと思った。
「グローヴァー、それは僕の父上を馬鹿にしてるのか?」
「…さぁ、そう聞こえた?」
ミラは後ろを振り返りもせずに言った。ドラコは顔を顰めて反論する前に、スネイプ先生がミラのすぐ横まで来て、冷たい眼差しで見下ろした。
ミラは平然と材料を鍋の中に入れ、かき混ぜていた。ロンは持っていた材料を落とし、ネビルはブルブル震えて小さくなってミラたちを見ていた。
「グローヴァー、お前の舌は同じくらい鋭いようだな」
「そうでしょうか?本当にことを言っただけですが----もしかして、スネイプ先生は生徒から嫌われてることをご存知なかったのですか?」
「グリフィンドール、二十点減点」と、スネイプ先生の冷たい声が降ってきた。
「お前の行動は、さぞマクゴナガル先生を困らせていることだろう。お前のような反抗的な生徒、いつまで経っても魔法薬が上達しない者、自分が有名人だと錯覚する者、それに、勝手にしゃべって知識をひけらかす生徒----グリフィンドールは手が付けられんな」
教室にいるすべてのスリザリン生がクスクスと笑い、特にパンジー・パーキンソンは意地の悪い笑みを浮かべて喜んでいる様に見えた。
「なら、マクゴナガル先生は」と、ミラははっきりとした声で話し出した。
「とても勇気があると言えるでしょう。誰かと違って、手が付けられないからと逃げている様じゃ----」
ボンッ、と隣りで大きな音が聞こえた。ハリーの鍋からモクモクと紫色の煙が立ち上がり、スネイプ先生は急いでハリーに振り返ると、サッと杖を降って鍋の中身を消してしまった。