第39章 明転
----また?いつ?いや、そんなわけがない。痛い。思い出せない。捨てるって、『何』を?
ミラは思い出そうとするのを諦めた。頭が真っ二つに引き裂かれそうな、鋭い痛みで今にも気を失いそうだった。思い出そうとするのをやめると、痛みは徐々に引いていき、自分の荒い息が聞き取れた。
痛みが大分引いた頃、ミラはやっと体を起こすことができた。
「…今のは一体なんだ、グローヴァー」
顔が青ざめているドラコが、壁に背を押し付けて、小さな声で呟いた。
「分からない…突然痛くなって……なんの…話しをしてたんだっけ…?」
「何って、日記だ…お前がリドルの日記と呼んだものだ。捨てろってどういうことだ」
「…分からない」
ミラは手の先から体が凍っていくような感覚がした。何か得体の知れないものが、自分を蝕んでいるような感覚が。
「お前…」
ドラコも足元から熱が奪われるような感覚がした。関わってはいけないと、直感が告げていた。今すぐこの場から逃げなければと、壁沿いにドアへ向かっていく。ミラが呪われていると、ドラコは気が付いた。
(なんなんだ、リドルの日記って…コイツになんの呪いがかかった…関わるなと父上がおっしゃっていたことは、このことなのか?)
カチャ、と手がドアノブに届いた。その音はこの静かな教室にやたら響き、ドラコはビクリと震えた。ミラに聞こえただろうかと、まだ教室の真ん中で座り込んでいるミラを見た。が、ミラはドラコに背を向けたまま、ピクリとも動かなかった。
「お、おい…日記のことだが、もういい…あんなものいらない!それに、急用を思い出してーーー」
「行って」
「…え」
「もう呼び出さないし----私ともう関わらない方がいい」