第39章 明転
「あとでやり返されても知らないから」
「お前も人のこと言えるのか?」
また二人は静かに睨み合ったあと、ドラコはマダム・ポンフリーがいないか聞き耳を立てた。
「そんなことより、あの日記だ。お前、あの時ポッターのじゃないと言いかけていただろう」
すぐにドラコが何を聞きにきたのかわかった。
「1942年と表紙に書いてあった。五十年前のものだ、どうしてポッターが持ってる。どこで手に入れた」
「…ただの日記帳だよ」
「それにしては随分取り返すことに必死だった」
ミラは黙り込んだ。
「お前たち、どこまで『秘密の部屋』のことを知った?」
ドラコが秘密の部屋の『継承者』ではないことはわかっていたが、ドラコも秘密の部屋のことを知りたい一人だった。父親のルシウスは全貌を知っているようだが、それを息子のドラコに全てを話さなかった。
ミラたちが秘密の部屋の『継承者』を探っていることも、ドラコにはわかっていた。しかし、ハリーたちに直接聞くのも、プライドの高いドラコにはできないことだ。特にハリーには絶対に下手に出たくない気持ちが大きいこともある。
しかし、ミラはつい最近ハリーから、ハグリッドが五十年前に秘密の部屋を開けたと聞いたばかりだった。もしそのことをドラコに言えば、ドラコが何をするかくらい想像がつく。ドラコがハグリッドのことをよく思っていないこともよく知っているからだ。
「知ってたとしても、ドラコには教えたくない----けど、あの日記ならハリーが捨てられてるのを拾ってきた。どんな理由でかはわからないけど、誰かが捨てたんだ」
日記の仕掛けのことは言わなかったが、医務室に忍び込んでまで聞きに来たのだ。これくらい教えてあげてもいいだろうと、ミラは思った。
「日記には何が書いてあった」
「何も----ただのボロい日記だよ。調べるだけ時間の無駄さ」
ドラコはしばらく黙り込んだ。
「その日記、今度僕の元へ持ってこい」
「いやだ」