第39章 明転
数秒薄いグレーの瞳を睨みつけた後、ミラはやっと力を抜いた。掴んでいた手首の手も離し、口から手を離せとドラコの手を軽く叩いた。
ようやく大人しくなったミラに、ドラコも口と肩から手を離した。
「スリザリンってのは、夜這いもするのか?」
「だ、誰がお前なんかにーーーっ!」
最低だな、とミラが軽蔑の眼差しをドラコに向けると、ドラコは声を荒げた。ミラは慌ててドラコの口に手を当てた。
「うるさいって!」
「誰のせいだと…」
ミラとドラコは耳を澄ませたが、マダム・ポンフリーが近くにいないことにホッとした。
「アンタ、さっき勝手にカーテン開けた時、私が着替えてたらどうするんだ?」
「っ…」
珍しくドラコの頬に赤みがさし、気まずげに視線を逸らした。その様子に、ミラはドラコがそこまで配慮ができなかったことに少し驚いた。多分、医務室にもこっそり入ってきたんだろうとミラは推測した。
「それにストーカーじゃん。蛇の寮だけに執念深い」
「お前が僕の呼び出しに応えなから悪い」
「…」
ミラはジットリとドラコを睨み付けた。しばらく無言が続いたが、それでもミラはドラコを睨み続けた。ドラコも負けじとミラを見据えていたが、自分のやっていることは夜這いまがいに変わりなく、「悪かった」と、小さな声で呟いた。
「それって、私に対して?それともジニーに対して?」
「は?なんで僕がウィーズリーなんかに謝らなきゃいけないんだ」
「…」
ドラコのこういうところが嫌いだと、ミラは思った。ロンならお互い嫌味を言い合っているところは何回も見てきたが、ジニーが一体ドラコに何をしたのだろうか。ただウィーズリー家だからという理由もあるだろうが、更にハリーが絡むと見境が無い。
かと言って、ミラもハリーの悪口やいじめる者がいれば攻撃的になるのだが、いまいちドラコのことが理解できないとも思った。