第39章 明転
次の日、ハリーとロンの口からとんでもない言葉が飛び出した。朝食を食べる前に、グリフィンドールの談話室から近い、誰もいない教室にハーマイオニーと連れて行かれた。
「秘密の部屋を開けたのはハグリッドだ」
「…はぁ?」
ミラは最初、寝起きの頭では理解できず、何を言っているんだとハリーの顔をマジマジと見た。エイプリールフールはまだ先なのに、とも思ったが、ハリーの顔は至って真剣だった。
確かに、ハグリッドは大きくて怪物のような生物が大好きだという、困った趣味を持っていることなど、四人の中ではとっくに知っていた。去年はハグリッドの古屋の中でドラゴンの赤ちゃんを育てようとしたことや、三つの頭を持つ三頭犬に「ふわふわのフラッフィー」と名付けたり、そう簡単に忘れるわけがなかった。
「ハグリッドなら----多分、この城のどこかに潜んでる怪物を一眼でも見たいって思うはずだよ。多分、怪物が長い間狭苦しいところに閉じ込められて、気の毒に思った。だから少しの間でも、たくさん足を伸ばすチャンスを与えるべきだって…」
「待って、ハリー。ハグリッドが秘密の部屋の『継承者』だって言いたいのか?」
ミラは信じられない気持ちでハリーを見た。いまだにハリーが『リドルの日記』で見たことを信じられないでいた。三人は嫌と言うほどハリーにその話を聞かせたが、同じことの繰り返しの議論になるのだった。
「でも、僕見たんだ。何か大きくて毛むくじゃらなやつが----でも、ハグリッドが誰かを殺そうなんて、絶対にない。これは確かだ」
「リドルは、犯人を間違えていたかもしれないわ。みんなを襲ったのは別の怪物だったかもしれない----」
「ホグワーツに一体何匹怪物がいれば気が済むんだい?」
ロンは嫌そうな顔でぼそりと呟いた。
ミラはハグリッドが秘密の部屋を開けたなんて、信じたくない気持ちで三人の話を聞いていた。それはハリー、ロン、ハーマイオニーも同じなことも分かっていた。
しかし、ハグリッドがホグワーツを退学されたことは、もう知っていた。なぜ退学にあったかは知らないけれど。ハグリッドが追い出されて、誰も襲われなくなったおかげで、トロフィー室に飾られたリドルの特別功労賞が、何よりの証拠だ。