第37章 幸せの箱庭
三人が寝静まった後、ミラは一人談話室にやってきた。いつも通り魔力のコントロールを行うために来たが、何故だかやる気が起きず、ぼんやりと暖炉の火を見つめていた。どうしてこんなことを毎晩しなきゃいけなんだろう。最近は大分眠れるようになったのに、気が付くと真夜中の談話室にやってきてしまう。まるで誰かに強制されているような、そんなことありえないのに、違和感が拭えなくて、ミラは難しい顔をして暖炉を睨み付けた。
そしてドラコの純血一族の話も、最初はすごく楽しいと思って聞いていたのに、最近はそれを思うこともない。途中で授業の話や、宿題の話に切り替えてなんとか保っている状態だった。
「変だ…こんなこと、自分らしくない…」
何か大切なことを忘れている気がする----せっかくリドルの日記という『秘密の部屋』の手がかりが掴めそうなのに、肝心な時にぼんやりしてしまい、三人の足手まといだ。
「…ミラ、大丈夫?」
静かな談話室に、女子部屋から降りてきたジニーが、心配そうにミラを見ていた。
「…ジニー、こんな時間にどうした?」
「ちょっと眠れなくて…」
ジニーはミラの隣に腰掛けると、心配そうにミラの顔を覗き込んだ。
「また眠れなくなっちゃったの?」
「…ん、そんなところ」
魔力のコントロールをしていることは、ジニーにも言っていなかった。何より、ジニーにこれ以上心配かけたくなかった。
「ジニーは最近どう?前に言ってたこと、まだ続いてる?」
ジニーは首を振った。ミラは安堵の息をつくと、視線をジニーから暖炉に移した。そうだ、ジニーは自分に悩みを打ち明けてくれた。少しだけなら、自分の悩みも話してみてもいいのではと、ミラは思った。
「ジニー…その、聞いて欲しいことがあるんだけど」
ミラが呟くと、ジニーが自分を見ている視線を感じた。