第37章 幸せの箱庭
ドラコ・マルフォイという人物は、高慢で、平気で人の傷つくことを発し、偉そうな態度をとる嫌な少年だと、ホグワーツ中の誰もが思っていることだろう。特にハリーへの嫌がらせは酷く、これまでも何回も衝突してきた。ミラも例外なく「捨て子」、「教養がなってない」などと、嫌味を言われたことは何回もある。
「そもそも僕たち純血主義は、純粋な魔法を守っているんだ。創始者の一人、サラザール・スリザリンによって提唱された。当時はマグルの魔法使いへの扱いは不当で、虐げられてきた。スリザリンこそマグルがどういったものかよくわかってるから、僕たち本当の魔法使いや魔女を守ろうとしてきたんだ----才能があるから全てを受け入れようなんて、悍ましい考えだ」
だが、意外かも知れないが、ドラコは実は面倒見がいいとミラはわかっていた。どんなに悪態をつこうが、文句を浴びせても、魔法薬で困ったことがあれば、渋々と言った様子だが手伝ってくれるのだ。
もちろん、これがハリーやロンであれば助けることなく、大きな声で嫌味を言ってスネイプ先生を召喚するのは目に見えているが。
クリスマス休暇もあと少しで終わる頃、ドラコは誰も使われていない教室にミラを呼び出した。呼び出したと言っても、ランチを食べに大広間へ行った時、たまたま目が合った時に合図をくれたぐらいだ。もし目が合わなければ、今日の集まりもなかっただろう。
ハリーとロンにはいつもの学校徘徊をしてくると言って、抜け出してきた。
この名前のない歪の関係を、ミラはどこか心地よく思っていた。この間は渋っていたくせに、いざ純血主義について話してみればドラコはスラスラと話し始めた。
「僕の家を含めて、純血の家系は二十八一族しかいないらしいが、それもどこまで保てるかわからない。近年は半純血やマグルと結婚するところも多いからな」
「じゃあ、ドラコもいつか大人になったら、純血の家系のところと結婚するって決めてるんだ」
「当たり前だろ。僕の父上と母上も純血だ。しかも、母上はブラック家の正統な純血一族からマルフォイ家に嫁いだんだ」
「へぇ〜〜〜」
「…興味ないならやめるぞ」
「あるある、めっちゃ興味ある」
白々しいな、とドラコはミラを見据えたが、ミラは機嫌良さげに微笑むだけだった。