第5章 組分け帽子
マクゴナガル先生は、上座のテーブルのところまで一年生を引率して、先生方に背を向ける格好で、一列に並ばせると、上級生のほうに顔を向けさせた。天井を見上げると、ビロードのような黒い空に星が点々と光っていて、大広間の天井は本当に空が広がっているように見えた。
「本当の空のように魔法がかけられているのよ」と、誰に話しているかわからないハーマイオニーの囁く声が聞こえた。
あんなにいっぱいあった教科書の内容を、よく暗記したなとミラは思った。
そんな事を思っていると、いつの間にか自分たちの前に4本足の椅子の上に、つぎはぎだらけでボロボロのとんがり帽子で、とても汚らしいものだった。
一年生の視線を一心に受ける帽子は、突然ピクピクと動きだし、帽子のヘリにあった割れ目がまるで口のように開き、歌い出した。
歌い終わると、広間に居たみんなが拍手を送った。
呆然とその光景を、ミラは見ていた。ミラはますますどの寮に入るか悩んだし、ハリーと別れるんじゃないかとヒヤヒヤした。
後ろからロンが、フレッドがトロールとレスリングをさせられると話し声が聞こえたが、ミラはそれどころではなかった。
「…ハリー」
ミラは不安そうに後ろにいるハリーに振り返った。ハリーも不安そうな顔をしていて、ミラはハリーの手を取った。
「…違う寮になっても友達だ」
「何を言ってるんだ、ミラ。当たり前だろ」
「今にもここから去りたいって顔してるのに?」
「君もそう変わらない顔をしているよ」
「そりゃどーも」
フッと力なく二人は笑いかけた。ハリーの顔から、ほんの少しの不安が消えたとわかると、ミラも少しだけ気分が良くなった。
「名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください」
そんな二人の不安など誰にも届く事なく、マクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻紙を手にして言った。
「アボット、ハンナ!」
金髪のおさげに、ピンク色の頬した女の子が、名前を呼ばれると転がるように前に出て行った。帽子を被らされ、椅子に座ると一瞬の沈黙があった。
そして___。
「ハッフルパフ!」
と、帽子が叫んだ。右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、ハンナはハッフルパフのテーブルへと向かって行った。