第31章 狂ったブラッジャー
「一ヶ月も?その間にマルフォイが学校中のマグル生まれの半分を襲うよ!」
「ロン、まだマルフォイが『継承者』って決まったわけじゃないし--そもそも、そんな度胸あると思う?」
「あいつならやりかねないさ」
しかし、また目を釣り上げたハーマイオニーの顔を見て、ロンは慌てて付け加えた。
「でも、今のところ、それが最良の計画だな。全力で取り掛かろう」
「こいつ…」と、ミラは調子のいいロンを横から呆れた目で見た。
「でも私、一回スネイプの保管庫に入ってみたかったんだ。それに、今後お世話になるかも知れないし」
「そうならないことを祈るよ」
と、ハリーは苦虫を噛み潰したような顔をして言った。
トイレを出るとき、誰もいないことを確認してから四人はトイレを出た。談話室に向かう途中、ミラはハーマイオニーの横に並んで話しかけた。
「ハーマイオニー、よかったらその本あとで貸して。もしかしたら今後、役立つものもあるかも知れないし」
「あら、珍しく勉強熱心ね」
「ダメだよ、ハーマイオニー。僕、嫌な予感がする」
後ろでクィディッチの話をしていたらハリーとロンが、会話に慌てて入ってきた。
「僕も。君ならともかく、ミラなら誰かをナメクジに変える薬を作って盛るかもしれないぞ」
「頭から手が生えるよりマシだと思うけど」
「ほらみろ、悪用しかねないぞ」
ロンは『禁書』に描かれた挿絵を思い出したのか、顔を青くさせた。
「でもさ、ハリー。ほんの少しだけ、夏休みの間だけさ、カエルとかナメクジの世話をしたくない?」
「…」
ミラはニンマリとハリーを見ると、ハリーは考える素振りをして黙り込んだ。
「…それって魔法を使ったこと、バレないかな?」
「ハリー!」
「冗談だって、ハーマイオニー」
ミラの悪ノリに付き合った時のハリーは、どことなく信用できないなと、ロンはこっそり思った。しかし、ハリーの家族を見たことがあるロンは、ハリーならやるかも知れないが、それはそれで面白そうだとも思っていた。
「ミラも冗談よね?悪用じゃなくて、今後のための勉強に使う、そうでしょ?」
「もちろんさ!」
今まで見たこともない爽やかな笑顔をハーマイオニーに向けるミラを見て、ハリーとロンは「うわぁ」と顔を引き攣らせた。