第30章 名前のない関係
ポリジュース薬を作るにはまず、『もっとも強力な薬』という本が必要だった。ハーマイオニーの推測では、図書館の禁書にあるのではないか----そして禁書の棚の本を持ち出す方法はたった一つ、先生の署名入り許可証をもらわなければいけないことだ。
その許可証をもらえる確率が高いのは、この学校でたった一人、ロックハート先生だとミラ、ハリー、ロンはすぐに答えた。何しろ、ホグワーツの教師を欺いて禁書の本を取ろうなど、まず無理な話だろう。
ハーマイオニーは別として、三人はいろんな先生から目をつけられている自覚があった。
そこで白羽の矢が立ったのがロックハート先生だ。ロン曰く、間抜けな先生は彼しかないと言うことだが、ハリーはロックハート先生のお気に入りだし、学年最優秀生のハーマイオニーは毎回完璧な答案で、ロックハート先生を喜ばす天才だ。
次のロックハート先生の授業では、彼を上機嫌にしておかなければいけない----ということで、ミラはハーマイオニーに本をよく読むようにと、マクゴナガル先生のような目をしていたハーマイオニーに渋々頷いた。
そしてミラは今、一人で学校の裏に来ていた。天気は久々の快晴で、日に当たっていると真っ黒の上衣の中は蒸し風呂のようで、ミラは上衣を畳んでカバンの上に置いていた。全ての授業を終え、芝生の上に座ってとある人物を待っていた。
待っている人物がいつもの三人なら、変に緊張しなくてよかっただろう。膝の上で開いているロックハート先生の本の内容も、読み流してはいるが、全く頭に入ってこなかった。
(来てくれるかな…)
ミラは自信がなかった。呼び出した相手はドラコ・マルフォイであり、罰則のあった日から全く話してもいなければ、目も合わない。完全に切れた縁だと思ったが、やっぱり元を辿れば、今回はこちらが悪かったとミラは感じていた。
(呼び出してみたものの…なんて話せば…トムに聞いておけばよかった?)
日記もしばらく書いていなかった。謝るとトムに伝えた手前、まだドラコに謝っていないことに後ろめたさを感じていた。つまり、いい報告ができず、疎遠になっていた。しかし、問題はそこではない。ドラコが来てくれるかが問題だった。