第29章 継承者
「そうよ。でもこれしかないわ」
それは数週間前に、スネイプ先生が授業で話していたものだった。ミラは深刻な顔でハーマイオニーを見ていた。しかし、ハリーとロンは「それ、何?」と、わからない様子だった。
「この間、スネイプ先生が授業で話してたでしょ---」
「魔法薬の授業中に、僕たちがスネイプに話しを聞いてると思ってるの?もっとマシなことやってるよ」
「自分以外の誰かに変身できる薬なのよ」と、ハーマイオニーはどこか目が輝いて見えた。
「私たち四人で、スリザリンの誰か四人に変身するの。誰も私たちの正体を知らない。マルフォイは多分、なんでも話してくれるわ。今頃、スリザリン寮の談話室で、マルフォイがその自慢話の真っ最中かもしれない。それさえ聞くことができれば」
ミラは体から熱が冷めていくような気がした。もし、ドラコが本当に『秘密の部屋』の継承者だったら----そうであってほしくないと、ミラは膝の上に乗せていた手を強く握り込んだ。
ハリーたちがまだ話の続きをしているのに、それらが頭に入らず、聞き流している状態だった。もしドラコと喧嘩をしていなければ、ドラコが『継承者』ではないと言い切れたかもしれない。しかし、何か知っているような口ぶりもあり、彼が白とは言い切れない。
(こんなことになるなら、早く謝ればよかった…)
何をまごついていたのだろうと、ミラは後悔した。
「騙されるとしたら、よっぽど鈍い先生だな----」
と、ロンが言ったところで、ミラは会話に戻ったが、随分聞き流してしまったらしい。