第4章 9と3/4番線
ミラはボートからおり、二人の元へ向かった。
「この船に乗れば。わたしは他のところにお邪魔するから」
「あ、ありがとう…」
まだメソメソしている男の子がお礼を言った。
「でもあなた、あの子たちと友達でしょ?」
「こんな泣き虫、他の船に乗られたら迷惑だと思われるよ。ハリーは優しいから大丈夫。ロンは…わからないけど」
ハーマイオニーが何か言いかける前に、ミラは他に空きがないか探した。どの船もすでに四人乗っており、空いていたのは最後にコンパートメントに乗り込んできたドラコたちのボートだった。
「ここ、お邪魔させて」
ミラは返事を聞く前にボートに乗り込んだ。前を見ていたドラコ、クラッブ、ゴイルは突然乗り込んできたミラに驚いた。空いていたのは、ボートの先に座るドラコの向かいで、ミラはヒョイっとクラッブとゴイルの間を抜けて、空いているそこへ腰掛けた。
「さっきぶりだね、ドラコ」
「ふん、よく僕の前に顔を出せたな、グローヴァー。この間、あいつがポッターだってこと知っていただろう」
すっかりドラコは御立腹だった。肩をすくめたミラは「色々事情があってね」と、苦笑いした。
「あの日はハリーが初めて魔法界に来た日でさ、漏れ鍋にハリーが来ているとわかると囲まれて大変だったから。だからごめん、ドラコ。あんまり騒ぎに巻き込まれたくなくて」
ミラは申し訳なさそうに言った。ドラコはまだ機嫌が悪そうだが、またフンと鼻を鳴らしてホグワーツの方を向いた。
(納得はしてないけど、理解はしてくれたってとこかな)
ミラはドラコの態度を見てそう思った。ロンが汽車の中で話してくれた、『例のあの人』が消えた時、真っ先にこっち側に戻って来た家族の一つなんだと教えてくれた。もちろんドラコが汽車の中でハリーに言ったことは許せないでいた。
「決めたのか、どこに入るか」
「え…」
視線はこちらに向けられてはいないが、ドラコにまさか話しかけられるとは思ってもいなくて、ミラは驚いてドラコを見た。中々答えないミラに痺れを切らしたドラコは「どうなんだ」とこちらを向いて聞いてきた。
「…まだ、決めてない」
ドラコの視線から逃げるように、ミラが次にホグワーツの方を向いた。