第27章 罰則
約束の時間になる十分前、ミラは薄暗い地下牢の道を歩いていた。罰則でスネイプ先生の部屋に向かわなければいけなかった。ハリーはロックハート先生のファンレターの返事を書く罰則。ロンは管理人のフィルチの元でトロフィー・ルームで優勝杯を磨く罰則。
誰がどこに行っても楽しくない罰則であり、去年の禁じられた森で傷ついたユニコーンを探す方がまだよかったと、ミラは思っていた。
ヴォルデモートのことは抜きにして。
消灯時間の九時まであと1時間だと言うのに、地下の通路にはまだチラホラとスリザリン生が見受けられた。グリフィンドール生のミラが、たった一人この通路を歩いている姿は、かなり目立っていた。
不思議そうな目線や、怪しむ視線、クスクス聞こえる笑い声など、いろいろなものを向けられて、ミラは不快に思いながらも、なんとも思っていない装いをして歩き続けた。
「捨て子がこんな時間に、ここで何をしてるんだ?」
今朝鼻を殴りつけた人物の声が後ろからした。ミラはめんどくさそうに振り返ると、鼻に大きなガーゼを貼り付けてニヤニヤと笑っているドラコと、その後ろには子分のクラッブとゴイルがいた。
殴られたことを覚えていないのか、それとも子分がいて強気なのか、関わるとめんどくさいのと、スネイプ先生の罰則に遅れるわけにはいかず、ミラは無視してまた歩き出した。
「なんでお前がここにいるか、当ててやろうか?あの車のことで罰則を受けに来たんだろう。」
ドラコはミラのあとをついてきた。
「グリフィンドールの奴らはイカれている。あれを英雄のように語る君たちを見ていると頭が痛くなる----お前も、ポッターもウィーズリーも、さぞ持て囃されていい気分だったみたいだけど、あんなポンコツの車で飛ぼうと思う馬鹿もいたなんてね」
クラッブとゴイルがゲラゲラ笑っている声が聞こえた。
「目立ちたがり屋のポッターと一緒にいれば、自分も目立つとウィーズリーのように思っているようだけど----」
「マルフォイ」
ミラは歩いていた足を止めた。いきなり止まったせいで、ドラコはもう少しでミラにぶつかりそうになった。ミラは振り返りはしなかったが、その声はドラコにははっきり聞こえた。