第26章 汚れた血
ロックハート先生の教室に着くと、ハリーはロックハート先生から一番後ろの席に座っていた。机に本を七冊重ねて置き、実物を見たくないと言わんばかりに不機嫌な顔をしていた。
「視線だけでベーコンが焦げそうだ」
ハリーの隣に座ったミラも、ハリーの真似をして本を山のように積み上げた。
「授業だけはまともであってほしいね」
「本当そうだよ…」
ロックハート先生を見て、二人は大きなため息をはいた。
ロンとハーマイオニーも教室にやってくると、ロンはハリーの隣、ハーマイオニーはミラの隣に座った。
「顔で目玉焼きができそうだよ」と、ロンが言った。
「ベーコンエッグの完成だ」
「なんのこと?」
ロンはおかしな顔でミラを見ると、ミラは笑って誤魔化した。
「さっきの一年生、クリービーだっけ?ジニーと出会わないといいね。そうじゃないと、二人でハリー・ポッター・ファンクラブを始めちゃうよ」
「やめてくれよ」
ハリーがロンの話を遮るように言った。もしこのことがロックハート先生に聞かれれば、まためんどくさいことになることがわかっていた。
クラスの人員が着席すると、ロックハート先生の大きな咳払いでみんながお喋りをやめた。ロックハート先生はネビルの前までやってくると、『トロールとの旅』の本を取り上げ、ウインクしている自分自身の写真のついた表紙を、生徒に見えるように、高々と掲げた。
「私だ。ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員。そして、『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞----もっとも、私はそんな話をするつもりではありませんよ。バンドンのバンシー(泣き妖怪)をスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」
シン、とした教室に、ごく数人が弱く笑った。ロックハート先生はみんなが笑うのを期待していたようだが、ミラは眉間に皺を少し寄せて、意味がわからないと言った顔をしていた。