第24章 車通学
マクゴナガル先生は、一眼見て怒っていると三人は確信した。これまで何度か先生の怒った顔を見たことはあっても、先生の唇が、こんなに真一文字に結ばれているのを見たことがあっただろうか、それとも忘れてしまったか、もう三人はわからなかった。
マクゴナガル先生は部屋に入るなり、杖を振り上げた。ミラは目を閉じて、罰を受ける覚悟を決めた----のだが、一向に何かが起こった気配はなかった。代わりに、寒かった部屋の暖炉に暖かな火がついていた。
「お掛けなさい」
先生に言われ、三人は暖炉のそばの椅子におずおずと座った。
「ご説明なさい」
と、マクゴナガル先生のメガネが不吉に光った。ロンはこれまでに起こったことを、詳細に話した。スネイプ先生とは違い、マクゴナガル先生はロンの話を遮ることなく、また怒鳴ることもなかった。
「----他に方法がなくて…僕たち、列車に乗れなくて…」
「何故フクロウ便を送らなかったのですか?あなた達はフクロウをお持ちでしょう」
ミラとハリーは、ハッと今気が付いたとお互い顔を見合わせた。
「ぼ、僕たち----思いつきもしなくて…」
「そのことは、考えることもしなかったでしょうとも」
「先生、そのことですが、私たちの手紙は----」
ミラは弁明しようと声を上げた。きっとあの時フクロウ便を送ったとしても、ハリーを学校に行かせたくないドビーという屋敷しもべ妖精に、また邪魔をされると思ったからだ。しかし、その弁明をする前に、部屋の扉にノックされた。ますます悦に入った顔のスネイプ先生が、扉を開けた。
ダンブルドア校長だった。校長先生はいつもと違って、深刻そうな顔をしていた。
「どうしてこんなことをしたのか、説明してくれるかね?」
ダンブルドア校長は静かに言った。失望したような声だったが、ミラは鉤鼻越しに見つめられる校長先生の目をジッと見つめた。
かわりに、ハリーが全てをダンブルドア校長に話した。フォード・アングリアの持ち主が、アーサーであることはふせ、三人が駅のそばに留めてあった車が、たまたま車が空飛ぶ車だったのだと説明した。
きっとダンブルドア校長には、お見通しだろうと感じていたが、校長は一切車のことには触れなかった。ハリーが話し終わっても、ダンブルドア校長は三人を静かに見続けていた。