第24章 車通学
「だってみんな、あの人のこと嫌ってるし----」
「おそらく」と、三人のすぐ背後で冷たい声が聞こえた。ミラは反射的に杖をとり、振り返ると、杖を持った手は冷たい大きな手に捕まれ、目標から逸らされてしまった。
「ッ!」
「その人物は、なぜ君たち三人が学校の列車に乗っていなかったのか、その理由を聞くために待っているのだろう」
ハリーとロンも振り返った。脂っこい黒い髪の毛を肩まで伸ばし、痩せた身体、土気色の顔に鉤鼻のその人は、口元に微笑を浮かべていた。その表情を見ただけで、ハリーとロンには、どんなに酷い目に遭うのかがよくわかった。
「ミス・グローヴァー、教師に杖を向けるとは…一体どのような呪いをかけようとしたのか大変興味深い」
「----大変失礼しました、スネイプ先生…先生だとは思わず…」
「ここは学校、一体何に怯える必要があるのか」
「怯えではありません、自衛です」
「ほう」
静かに睨み合うミラとスネイプ先生に、ハリーとロンは顔を引き攣らせて見守っていた。何か話に入っては行けないような、妙な緊張感があった。
「ついて来るように」
スネイプ先生はそれ以上何も言うことなく、ミラの手を離すと、黒いローブをはためかせて歩き出した。気に食わないと、ミラは目を細めてスネイプの後に従った。ハリーとロンはお互い顔を見合わせる勇気もなく、ミラの後に続くと、玄関ホールに入った。
大広間から美味しそうな匂いがするのに、スネイプ先生は三人を暖かな明る居場所から遠ざけるように、冷たい地下牢へ導いていった。
「入れ!」
そう言われて入れられた場所は、スネイプ先生の研究室だった。
薄暗い壁の棚には大きなガラスの容器が並べられていた。中には何か不気味標本が入っていたが、暖炉に火がないせいか、気味の悪い雰囲気が漂っていた。
「良い趣味してますね、先生」などと、今は言えた雰囲気じゃないとミラは固く口を閉じた。
スネイプ先生は扉を閉じると、三人の方に向き直った。
「なるほど」と、スネイプ先生は静かに話しだした。
「有名なハリー・ポッターと、忠実な学友のウィーズリーとミス・グローヴァーは、あの列車では不満だった。派手に到着したかった。三人は、それが望みだったわけか?」