第24章 車通学
ギャーギャー二匹のフクロウの鳴き声がやけに大きく聞こえて、ミラはぼんやりしていた意識から目を覚ました。前屈みになっていたことと、フクロウの籠を両腕に抱えていたおかげなのか、前の席まで吹き飛ばされずに済んだ。
「……生きてる」
ミラはボソリと呟き、両腕に抱えていた籠を離し、前の席を覗き込むようにハリーとロンの無事を確認した。
「…どうやら、二人とも生きてるみたいだね」
「なんとかね…それより、ロン、大丈夫かい?」
ハリーはフロントガラスにぶつけた頭にできたコブをさすりながら、心配そうにロンに声をかけた。ミラもロンを見ると、折れた杖を見て絶望した顔をしていた。
「杖が…僕の杖が…見て…」
杖は真っ二つに折れており、ミラもハリーも一瞬言葉を失った。「学校に行けば直してもらえるよ」と、どっちかが言いかけた瞬間、ハリーの座っている側の脇腹に、大きな闘牛が突っ込んできたような衝撃が走った。
助手席を覗き込んでいたミラは、その衝撃に「うわっ!」っと声をあげて、反対の後部座席の隅に体を叩きつけられた。
次に車の屋根にも同じような衝撃が走り、三人はパニックになった。
「一体なんが起こってるんだ!?」
ハリーの叫び声が聞こえたと同時に、太い枝が窓ガラスを突き抜けて入ってきた。
「木が…ぶつかった木に襲われてるっ!!!」
と、ロンの叫ぶ声で、ミラはやっと状況を理解できた。車のあちらこちらから、殴られているのか、ミラは車の天井が殴られる度に凹んでいくのを目にした。
(耐性さえ整えれたら…!)
吹き飛ばされたせいと、大きく揺れる車内の中で、ミラは中々自分の手に手が伸ばせなかった。
「もうダメだ!」と、ロンの喚き声が聞こえると、急に車体が揺れ始め、エンジンが生き返った。「バックだ!」と、ハリーの声が聞こえ、車はすぐにバックした。
全く外の景色が見れず、ミラは車が素早く後ろに下がっていくのを感じていた。ある程度木から離れたのか、車が止まる気配と共に、ミラもやっと体制を整えることができた。