第4章 9と3/4番線
「それ、なんだい?」
「驚いたな」
「彼だ」
と、双子はハリーの稲妻型の傷跡を指さしていた。双子がハリーのことを『ハリーポッター』かと聞くと、ハリーは「うん、そうだよ」と答えた。双子がハリーにポカンと見惚れていて、ハリーの頬が赤く染まっているのをミラは横目で見てニヤニヤしていた。
双子は母親が自分たちを探している声を聞きつけ、列車から飛び出して行ってしまった。
「1ヶ月ぶりにハリーって有名人なんだって思い出したよ」
「僕もだよ」
「今のうちにサインもらっておこうかな、ミスター・ポッター殿」
ミラはニヤッとハリーに笑ってみせると、ハリーは窓際にさっさと座って、まだプラットフォームにいる赤毛の一家を見ていた。ミラもハリーとは反対の窓際に座った。そこは赤毛の一家は見えないが、何かを話しているのは聞こえ、誰かがホグワーツのトイレの便座を送るよと言っていたのが聞こえ、ミラとハリーは顔を合わせてクスリと笑った。
「わたしも送ろうかな、ミス・メアリーに。院のトイレが少しでもマシになるかも」
冗談を言うミラに、ハリーはミラなら本当にしそうだと思った。何故なら、夏休みの間にノクチュアが持ってきたネズミの死骸を、ミス・メアリーの部屋前に置いて、飛び上がる姿を隠れて見ていたと楽しそうに話していたからだ。
そして数分もしないうちに、汽車はゆっくり動き出した。
・・・・・
汽車が出て少したった後、一番年下の赤毛の男の子がコンパートメントのドアを開けた。
「ここ空いてる?どこもいっぱいなんだ」
ハリーが頷いたことで、男の子はミラの横に腰掛けた。チラリとハリーを見たが、何も見なかったような振りをして、すぐに窓の外に目を移していた。ハリーとミラは、その子の鼻の頭がまだ汚れたままなことに気が付いた。そのすぐ後に、あの赤毛の双子が中に入ってきた。
「ハリー、自己紹介したっけ? 俺たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。お嬢さんの名前は?」
「わたしはミラ・グローヴァー。よろしく」
「よろしく、ミラ。じゃ、またあとでな」
双子はコンパートメントのドアを閉めて出て行った。