第22章 予期せぬ再開
手を取らなかったミラに、男は特に気にした様子はなかった。
「…ぶつかってすいませんでした」
ミラは頭を下げると、ドラコはミラが頭を下げて謝ってるのを、疑わしい目で見ていた。
「君は…ミラ・グローヴァーだね」と、男は一度ドラコの方をチラリと見た。ドラコもその視線に気が付くと、男に頷いてみせた。
「私はルシウス・マルフォイ。すでにわかっていると思うが、私はドラコの父だ。君のことはドラコから聞いている。マグルの孤児院に住んでいるそうだが…快適かね?それにご両親のことは何も知らないとか」
「----随分お喋りな息子をお持ちなようですね。でもあなたには関係のない事です」
ミラはピシャリと冷たくルシウスに言い放つと、ドラコを顰めた顔で見た。
「急いでいるので、もういいですか?」
と、ミラはルシウスの返事も待たずに、マルフォイ親子が出てきた通りに向かって歩き出した。が、横道に入ろうと思った時、ルシウスに手首を掴まれてしまった。
「待ちたまえ、ここは君のような子供が一人で行っていいような場所ではない」
壁に『夜の闇(ノクターン)横丁』と書かれた名札があるのを見つけると、ミラは疑わしい目でルシウスを見た。ルシウスやドラコの身なりを見る限り、裕福な家庭だとわかる服を身につけていたし、ホグワーツの配達の時間になると、いつもドラコは高価なお菓子を送ってきてもらっている。子供一人で行ってはいけないような、危ない通りなのだろうか?
「…マルフォイさんこそ、何か御用があったんですか?」
「君には関係のないことだ」
詮索は許さない、と冷たい灰色の瞳がミラを見下ろしていた。ミラは「わかりました」と言うと、行くのをやめ、何も聞かないと諦めて見せると、ルシウスは薄く口角を上げた。
「ジッとしていなさい」
ルシウスは杖を取り出すと、ミラに軽く振りかけた。何かされるのかと身構えたミラだったが、フワッと暖かい風が吹いただけだった。
「何を…!」
「あまりにも見るに堪えない格好だったので綺麗にしただけだ。随分煤だらけだったのでね」
「…」
早く離して欲しいと、ミラは掴まれている手首を引いたが、ルシウスはまだ離してくれないようだった。