第17章 目覚め
暗い意識から明るい方へ引き寄せられるように、ゆっくりと目が覚めた。クラクラする頭でぼんやり考えていると、トロールのことを思い出して、ミラは眠気が吹き飛んだ。
確かにトロールは気絶させたが、その後は? 全く思い出せなくてミラはクラクラする頭など無視して起き上がった。
「いっ…!」
全身が筋肉痛みたいな痛みが襲い、ミラは真っ白のベッドの上で上体を起こしたまま動きを止めた。物音に気が付いた誰かが、シャッと、カーテンを開けた。エメラルド色のローブが目に飛び込んできて、ミラがそれがすぐにマクゴナガル先生だと気が付いた。
「せんせ…」
「ミス・グローヴァー!!」
ミラは体を縮こまらせた。マクゴナガル先生の目は、潤んでいるようにも見えた。そして怒っている理由は、もうわかっていた。言いつけを守らず夜中に寮を抜け出し、ネビルを金縛りにしたこと。ハリー達と賢者の石を守りに4階の部屋に入ったこと。----ああ、なんてことだ。またマクゴナガル先生を失望させてしまった----もう飽きれられても仕方がない。と、暗い気持ちでいると、ふんわりと温かいものに抱きしめられた。
「目が覚めてよかったです、ミス・グローヴァー----重体の貴方を見た時は、本当に、本当に…生きた心地がしませんでした!」
マクゴナガル先生の声は震えていた。
「話しはミス・グレンジャーから伺ってます。手負とはいえ、巨大なトロール相手に一人で戦ったと----なんと愚かしいことでしょう」
「先生、ハリーは?ハーマイオニーは?ロンは?」
「みんな無事です----それより貴方のした事は、賞賛に値すると褒める方々もいるでしょう。自分を犠牲にして友人を守ったと----でも、私はこの件について、貴方を褒める事はないです。自分の命を危険に晒して、心配しない者がいないとでも?ミス・グレンジャーがどんな思いで貴方を見つけたか」
「…」
「貴方は自分が思っているより、周りから想われているのですよ」
マクゴナガル先生はミラをゆっくりと離すと、ベットの脇に置かれていたお菓子の山を指差した。