第16章 試される勇気
体のあちこちの骨がギシギシ、ミシミシと嫌な音を立てていた。ミラは朦朧としてきた意識に頭を振り、トロールを激しく睨みつけた。
「こんな、クソに、ころっ、される、くらいっ…なら!」
キ----ン、と耳鳴りが聞こえた。沸々と湧き上がってくる怒りをトロールに向けていると、バシン!と弾く大きな音が部屋中に響いた。途端、ミラはトロールの巨大な手から解放され、床に落ちた。突然解放された圧迫から、肺が一気に空気を求めて吸い込み出し、ミラは肺を押さえて咳き込んだ。ヌルリと、鼻の片方から鼻血が流れた。
トロールはいきなり握っていたミラが、なんらかの方法で手を弾き出したことに、驚いていたが、すぐにそんなことはどうでもよくなった。落としたミラに襲い掛かろうと、歩み寄ってきた。
「ゴホッゴホッ----ウスノロが…」
ミラは浮いていた巨大な棍棒に杖を向けると、部屋の天井ギリギリまで上がっていた。フイっと横に降って呪文を解除した。
「インカーセラス!」
更にトロールの足元に縄で縛り上げる呪文を素早く放ち、縄は巨大なトロールの足に複雑に絡み合った。トロールはもつれそうになる足をなんとかしようとその場に止まり、バランスを取ろうとしていた。
呪文の効果を失った棍棒は、ちょうど真下にいたトロールの頭のコブに直撃した。
トロールは目を回し、後ろへ大きく倒れ込んだ。土埃が舞い、ミラは上着で顔全体を覆った。トロールが起き上がってくる気配もなく、ミラはヨロヨロと、ハーマイオニーとハリーが進んだ扉に向かって歩き出した。
「ハリー…ハー、マイオニー…」
今行くから、追い付くから--------。
視界がどんどん暗くなり、ミラは逆らえない眠気に誘われ、力無く床に倒れ込んだ。