第14章 禁じられた森
「意識してなかった…」
「…」
「不快だったら直すよ、マルフォイ。これからは気を付ける」
「…別に不快とは思ってない」
「!」
「勝手に呼べばいいだろ…」
ぶっきらぼうにドラコは言うと、ふいっと顔をミラのいない方角に背けてしまった。
(なんで今更名前のことを言い出したんだぼくは…何が勝手に呼べだ、馬鹿馬鹿しい)
何故聞いてしまったのか、そして名前を呼ぶことを許してしまったのだろうかとドラコは疑問に思った。でも確かにあの時、喧嘩はしていたが、ミラが無意識で自分の名前を言った時、懐かしさと何かが自分の胸をくすぐったのだ。
「ドラコ」
「!」
「ドラコ!」
「な、なんだ急に名前を呼んで!」
自分の名前を連呼し出したミラに、ドラコは今更恥ずかしくなり振り返った。
「やっぱりマルフォイより、ドラコの方が言いやすくていいなって」
ミラは笑ってドラコに伝えた。
「そ、そうか……??????」
ドラコは言いようもない感情に混乱した。一瞬胸がギュッと押しつぶされた感覚が妙に気持ち悪く、何故かこれ以上彼女を見てはいけない気がして咄嗟に前を見た。
「…ここから先、血が途絶えてる…どうするんだ?」
話題を変えなくてはいけない。分からないが、自分の脳が警戒を伝えていた。
「うーん…一度ハグリッドたちと合流しよう。向こうも何か情報を得たかもしれない」
ミラは杖を空に掲げると、赤い花火を飛ばした。しばらくすると、暗い森の奥から、こっちに向かってドスドスと大きな足音を立てて走ってくるハグリッドを見つけた。
「ハグリッド!」
「大丈夫か、お前たち?何かあったのか?」
ハグリッドは自分たちに怪我がないか、心配そうにしていた。
「大丈夫だよ、ハグリッド。怪我はしてない。でもユニコーンの血がここから先見つからないんだ」
「…そうか、お前さんたちに何にもなけりゃいいんだ。よーし、ハリー達のところへ戻ろう」
安心したハグリッドは、ミラとドラコ、ファングを連れて走って来た道を戻った。