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【HP】怪鳥の子

第14章 禁じられた森


 ドラコは軽くショックを受けていた。マルフォイ家に生まれてこの方、誰にもケチだとは言われたことが一度もなかった。届いた菓子折りなどはいつも同じ寮の仲間ならば、欲しいと言われれば気にせずにあげていた。

 それが、寮が違う同級生だというのに、どがつくほどケチだと言われ、裕福な貴族であるマルフォイ家が、庶民の、しかも孤児院育ちの娘に、ケチだと言われてはマルフォイ家の嫡男として、聞き捨てなら無かった。

 「勝手にしろ!」と、ドラコは開きかけた口を無理やり閉じた。
 どうあっても、マルフォイ家の嫡男である自分がケチなわけがない、ケチであってはいけないと、自身のプライドが邪魔をしていた。

「……今回だけだからな」

 ギリっと奥歯を噛み締めて、「許してやるよ」と、ドラコは言った。腕を組んで睨み付けていたミラは、あっけに取られたようにドラコを見た。まさかドラコの方から折れてくれるとは思ってもいなかったのだ。

「…」

 「いつもそれくらい素直だったらいいのに」と、ミラは咄嗟に言おうとしたが、ここでドラコの機嫌を損ねると、彼はしつこいくらい許してくれないことをミラは思い出した。

 言いたいことはいっぱいあったが、プライドの高いドラコの方からようやく折れてくれたのだ。いつまでも自分も囚われてはいけないと、ミラは組んでいた腕を解いた。

「…わたしも、酷いこといっぱい言って…ごめん」

 二人は黙り込んだ。次に何を言っていいのか分からず、相手の足元ばかり見ていた。しばらくすると、ファングがまたクゥンと鳴いた。自分たちのそばに座り込み、「先に進まないの?」と伺っているように見えた。

「----行こっか」
「ああ、そうだな」

 ようやく歩き始めた二人の後を、ファングは着いて行った。しばらく歩いていると、ユニコーンの血が途切れ、進む方角が分からず、どうしようかとミラが悩んでいた時だった。

「お前、さっきぼくの事、名前で呼んだだろ」
「え?」
「覚えてないのか?」
「えっと…うん、呼んだ、ね」

 怒っていたとは言え、無意識に名前を読んでしまっていたことに、ドラコに指摘されて初めてミラは気が付いた。
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