第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
クラッブとゴイルの呪いは、ドラコに当たらないように飛んでくる。ドラコもそれは同じで、自分の後ろ側にいる二人に当たらないように呪いをかけてくるが、避けるので精一杯だった。
反撃をしようにも、どちらかが呪いを放つと避けることに集中しなければならなかった。時間が経てば経つほど、体力は削れていき、すでにミラの上着はかすった呪いで焦げたり、小さな穴が開いている。
全く攻撃の手を緩める気がないドラコはまだいいものの、それを楽しげゲラゲラ笑って見ているクラッブとゴイルにミラは心底吐き気がした。
その時、クラッブとゴイル、どちらかが飛ばした呪いを避けた瞬間、先に地面についた足がガクッと力が抜けて、体のバランスが崩れた。もう避け続けるのも限界と感じていた。もちろんそんなチャンスを逃すドラコじゃない。
ドラコが飛ばした魔法の光が自分に向っているのが見えた。
----クソ!!!
ミラはギュッと目を瞑った。
地面に倒れ込むと、それ以上の呪いは飛んでこなかった。いったいどんな呪いにかかったのだろうと、ミラは両手を地面について体を持ち上げた。
特に体に変な感じは無く、ミラはドラコを見た。
ドラコはこちらを見ていて、まるで石になったかのような、ショックを受けている顔をしていた。変に思ってクラッブとゴイルの方を見ると、同じようにビックリして自分を見ている。
「----いったい、何が…」
よっぽど酷い呪いをかけられたのか、ミラは顔を触ってみたが、おできだらけになった様子もない。もう一度ドラコの方を見ると、サラリと自分の座り込んでいる膝の上に何かが落ちた。よく見ると周りに長い髪が散らばっていた。
「…か、み?」
そういえば、やたら頭が軽い気がする----手を後ろに回すと、いつもある長い髪が全然つかめない。横の髪はあるのに、後ろの髪は特に短く、酷く不揃いなのが触った感触でわかった。
そして焦げ臭い匂いもする----どうやら髪に当たってしまったらしい。
「お前が悪いんだぞ!!!」
突然、ドラコが叫んだ。
「お前が…変に避けるからだ!」
捲し立てるようにドラコはミラに怒鳴りつけてきた。