第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
「っう……本を…!」
ミラは動かせる両手を使って地面を匍匐前進した。すぐ近くに転がっていた杖を掴んで、少し遠くに飛んでしまった本に手を伸ばした----。
「ここまでだ、グローヴァー」
息を切らしたドラコが、一瞬早くミラから本を掠め取った。地面に這いつくばっているミラを見て、ドラコは満足そうに見下げた。ミラはギッと、ドラコを睨み上げた。
「お前が欲しいのは、これだろう?」
ドラコは本から一枚の紙を抜き取ると、ドラコはチャーリーの手紙をミラに見せつけた。
「土曜日の真夜中、一番高い塔であのドラゴンを引き渡すんだろう」
「…」
「嫌だねぇ、あのバカな掘立て小屋の野蛮人のせいで、迷惑だと思わないのか?ポッターのことだ、さぞご立派なことをしていると思っているんだろう」
「インセンディオ!」
ミラはドラコの持っている手紙に向けて、火の呪文を唱えた。赤い光は手紙に当たり、瞬く間に燃え広がった。
「ひっ!!!!」
燃え上がった手紙を見て、ドラコは持っていた手紙を素早く捨てた。怯んだドラコの隙を見て、ミラは足縛りの呪いにかかった両足に杖を向け、呪いを解いた。
大きく擦りむいた膝が悲鳴を上げていたが、証拠が無くなった今、長居は無用と元来た道を戻ろうと、一歩、二歩踏み出した時、やっと追いついたクラッブとゴイルがやってきた。
やばい、そう思って振り返ると、杖をこちらに向けているドラコが何かの呪文を放とうとするのが見えた。咄嗟にしゃがみ込むと、ドラコの放った呪いは頭上を通り過ぎて、壁に当たった。
反撃しようとしたが、反対側からはクラッブとゴイルの呪いが飛んできた。
「おい!ちゃんと狙え!!ぼくにも当たるだろう!」
なんとか避けた二人の呪いは、ドラコの方に飛んでいき、ドラコは二人にイラつきの声を飛ばした。その隙にドラコに杖を振るうと、ドラコも素早くミラの呪いを避けた。
「ぼくの忠告を聞いていたら良かったなんて、今頃思っても遅いぞ!」
あの箒の件以来に見るドラコの怒りに、足が一歩後ろへ下がった。