第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
遠くなっていくドラコの背中を見て、ハグリッドとノーバートはどうなってしまうのだろうとミラは思った。魔法界の法律のことは知らないことが、ハグリッドとノーバートに悲しい思いはしてほしくなかった。
気が付けばポケットに入れてある杖を取り出していて、周りにいるスリザリン生に構わず、ドラコに杖を向けて走り出した。スリザリン生の誰かが「マルフォイ!」と注意を呼びかけていたが、もう止まれなかった。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!!!」
放った呪文は、振り返ったドラコが持っていた本に上手く当たった。本はスルリとドラコの手から離れ、地下の天井近くまで浮き上がった。
「お前!」
怒ったドラコも杖を抜いた。その瞬間に浮遊呪文を解除すると、高く浮き上がった本が落ちてきた。ミラは走ったまま前へ大きく跳ぶと、落ちてきた本を上手くキャッチして、そのままドラコの横を走り抜けた。
真っ直ぐ走っていると、向かい側から二人並んで歩いてくるスリザリン生がいた。
「クラッブ、ゴイル!そいつを捕まえろ!」
自分の後ろから追いかけてきたドラコが、前方の二人に声をかけると、いつもはトロール並に遅い思考も、ミラを見てピンときたのか、立ち塞がるようにして前の道を塞いだ。
「っ!!」
咄嗟に開いていた右の通路に逃げ込んでいくと、ドラコの足音が後から追いかけてくるのが聞こえた。
「おい!止まれ!!」
ドラコが叫んだが、ミラの頭はどうにかしてこの地下から抜け出せないか必死に考えていた。地下には魔法薬の授業以外で来ることがないため、全く今、自分が何処を走っているのかわからない。
それでも、ハグリッドとノーバートのためなら、何がなんでも抜け出してみせると、両手の中にある本をギュッと強く抱きしめた。
「ロコモトル・モルティス!」
すると、背中に呪文が当たった。走っていた足が突然ピッタリと両足がくっついてしまった。
「あっ!!!」
勢いのまま前につんのめり、持っていた本は手から飛び出してしまった。自身も顔を防ぐために、両手で顔を覆ったが、勢いが良すぎて両手が擦り切れるのがわかった。両膝にも痛みを感じた。