第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
目の前が真っ暗になったような気分だった。冷静になりきれていなかった。せめてロンにどんな本だったかを聞いておくべきだった。ミラは悔しさで顔を顰めた。
明らかにミラがドラコの持っている本に、何か秘密があると言ってしまったようなものだ。もうどう足掻いてもドラコの持っている本は、取り戻せないだろう。
「お前もいつまでもここでウロウロしない方がいい、間違ってもここでぼくに魔法をかけようなんて、馬鹿な真似はするなよ」
ドラコはそう言うと、上着を翻して談話室があるであろう方角へ向っていった。すでに何人かのスリザリン生が自分たちの横を通り過ぎており、グリフィンドール生のミラを見かけると、ヒソヒソと小声で何かを話しているのが聞こえた。
・・・・・
最高の気分だ。クィディッチの件や、魔法薬の授業の件で、苦い汁ばかり飲まされてきた気分だったが、このまま黙って引き下がるなんてことは、ぼくのプライドが絶対に許さなかった。何かないか、あいつらの弱みになるものは。
まさにそんな時だった。たまたまポッター達の声が聞こえた時、四人はぼくの存在に気が付いていなかった。よく見ると、コソコソ話していて、怪しいと思って耳を澄ました。
全く自分たちがどう見えているか、わかっていないらしい。
「ドラゴンの卵が孵るところなんて、一生に何度も見られると思うかい?」
ウィーズリーは今なんて言った?----ドラゴンの卵だって?
これはいいことを聞いた。ぼくに気が付いたポッターが、慌てて三人を黙らせたが、ぼくは聞いた。確かに、ドラゴンの卵が孵ると。
それからは面白いくらいポッター達が、ぼくを不安気に見てくる顔と言ったら。自分がいつ先生にドラゴンのことを伝えるか、毎日不安で仕方がないんだろうと思うと、これほど愉快なことはない。
グローヴァーも慌ててこの本を取り返しに来たと言うことは、きっとドラゴンのことについて、何かあると思ったからだ。あいつもこんなスリザリン生だらけの場所で魔法なんか使わないだろう----。
そうぼくは思った。
「マルフォイ!」
誰か後ろからぼくの名前を呼んでいて振り返ると、注意してやったと言うのに、杖を握りしめて走ってくるグローヴァーが、ぼくに杖を向けていた。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!!!」