第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
水曜日の夜、ミラとロンはハグリッドの小屋でノーバートの餌やりの手伝いをしていた。木箱に詰まった死んだネズミを喜んで食べているノーバートの姿に、ロンは嫌そうに見ていた。大方スキャバーズを思い浮かべたのだろうとミラは思った。
「早くチャーリーの手紙が届いてほしいよ」
「…そうだね」
ロンの呟きに、ミラは暗い返事をした。あと何回こうしてノーバートと会えるだろう----最近はそんなことばかり考えていた。
「…ノーバートも凶暴になるのかな?」
「かもね。凶暴じゃないドラゴンなんていないんじゃないか?」
「…覚えててくれたらいいな、わたし達のこと」
「どうだろ…そのころには餌と思ってるかも」
「かもね」
一杯目の木箱が終わりかけると、ミラは次の木箱を持ってくるとロンに告げて離れた。二箱目の木箱を抱えて部屋に戻ろうとすると、ロンの悲鳴が聞こえた。慌てて戻ると、ノーバートがロンの手に噛み付いていたのだった。
「痛い!何すんだこいつ!」
「ロン、殴っちゃダメだ!」
ミラは木箱を投げ捨てて、噛まれていない方の振り上げた手を掴んだ。ハグリッドも慌ててノーバートに駆け寄り、なんとか噛まれたロンの手を離させた。
血だらけのロンの手を、慌ててキッチンに連れて行き、水で洗い流した。
「やっぱりドラゴンは凶暴だよ!」
ロンは忌々しくノーバートを睨みつけた。
「お前が怖がらせたんだろ、ロン。お〜怖かったな〜ノーバート。もう大丈夫だ」
ハグリッドはノーバートをあやすと、ノーバートは甘えた声でハグリッドに擦り寄っていた。ハグリッドから大きめのハンカチをもらうと、ミラはロンの噛まれた手に巻きつけた。
「医務室には…行けないよね」
時間はすでに消灯時間をすぎ、もうすぐ深夜になる時間だった。
「明日の朝行こう、ロン。フィルチの猫に噛まれたって言えばいい」
「適当すぎないか?!こんな大きな歯形の猫なんかいるもんか!」
「じゃあ何に噛まれたって言えばいいんだ」
ミラとロンは困ったようにハンカチに包まれた手を見た。
「とりあえず談話室に戻ろう」
二人は慌ててハリーから借りた透明マントを持ってハグリッドの小屋を後にした。ハグリッドはノーバートに子守唄を歌っていた。