第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
ハリーに言われて三人は黙り込むと、数メートル先にドラコがいた。立ち止まって聞き耳を立てているようだった。ロンからドラコに視線を移した時には、もうドラコは先へ進んでいて、表情は見えなかった。
「…ハリー?」
ミラはハリーを見ると、ハリーは難しそうな顔でドラコの背中を見ていた。
ロンとハーマイオニーは、薬草学の教室に向かう途中ずっと言い争っていたが、とうとうハーマイオニーも折れて、午前中の休憩時間に行くことになった。
授業の終わりを告げる鐘が塔から聴こえて来るとすぐに、四人は道具を放り投げ、校庭を横切って森の外れへと急いだ。
小谷につくと、ハグリッドは興奮で顔が赤くなっていた。
卵はテーブルの上に置かれていて、すでに深い亀裂が入っていた。中からコツン、コツンと言う音が聞こえて、動いている様子がわかった。
みんな息を潜めて卵を見守っていると、突然、卵を引っ掻くような音が聞こえ出すと、卵がパックリと割れた。その中から、ドラゴンの赤ちゃんが出てきた。
「…すごい」
ハリーはとてもじゃないが、しわくちゃの黒いコウモリ傘のようだと思った反面、ミラからは感嘆の声が漏れた。
やせっぽちの真っ黒な胴体に不似合いな巨大な骨っぽい翼、長い鼻に大きな鼻の穴、こぶのようなツノで、オレンジ色の目が飛び出していた。くしゃみをすると、鼻から火を噴き出した。
「もう火も出せるんだ」
ミラはドラゴンが何かをするたびに目をキラキラさせて見ていた。
「素晴らしく美しいだろう」
「うん、そうだね、ハグリッド」
ハグリッドの呟きに答えたのはミラだけだった。ハグリッドがドラゴンに手を差し出して頭を撫でようとすると、尖った牙を見せてハグリッドの指を突いた。
「こりゃ凄い!ちゃんとママが分かるようだ!」
「ハグリッド、わたしも触っていい?」
「あぁ、もちろんだ!噛まれないように気をつけろよ」
「うん!」
ミラはそっと手をドラゴンの方へ伸ばした。ドラゴンもそれに気が付き、ミラの指先の匂いを嗅いでいた。ゆっくり、ゆっくりとドラゴンの鼻先に手を下ろしていくと、指先に暖かいドラゴンの皮膚に触れた。
なんて、美しいんだろう----ミラは愛おしげにドラゴンを見つめた。