第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
「あーあ、平穏な生活って、どんなもんなんだろう」
ハグリッドのドラゴンの件と、次々に出される宿題と来る日も来る日も格闘していたロンが溜め息をついた。ハーマイオニーが三人分の復習予定表を作り始めた時には、ハリーとロンは気が狂いそうだった。
反対にミラは時々ボーッとすることが増えた。勉強はしっかりやっているが、気が付くと窓の外を遠く見つめていることにハリーたちは気が付いていた。
今日も朝食の時、どこかぼんやりと食事をとっているミラに、ロンは「勉強しすぎてマジで狂ったのかもしれない」と、ハーマイオニーに聞こえないようにハリーに囁いた。
しかしその心配も、ハリーのヘドウィグがハグリッドからの手紙を持ってきたことで解決したのだった。その手紙には、『いよいよ生まれるぞ』とだけ書いてあった。
「行こう!」
心ここに在らずだったミラはパッと表情を変えた。瞳はキラキラと輝いていて、早くハグリッドの小屋に行きたくてたまらないとワクワクしている様子が隠しきれないでいた。
滅多に見ることのないミラの姿に、三人は一瞬ポカンと頭が真っ白になった。
「----もしかしてだけど、ミラ、最近ボーッとしてたのって、もしかしてあれが孵るのを楽しみにしてたのかい?」
「それ以外に何があるっているだ!こんなの滅多に見れないだろ!」
今すぐにでもハグリッドの小屋にすっ飛んでいきそうなミラの腕を掴んで、ハリーはため息をつきたくなった。今まで見たことがないくらい興奮しているミラに、ロンもハーマイオニーも口をポッカリ開けて見ていた。
ロンが薬草学の授業をサボって、小屋に向かおうとすると、ハーマイオニーがすぐに口を挟んだ。
「ダメよ、ロン!」
「だって、ハーマイオニー、ドラゴンの卵が孵るところなんて、一生に何度も見られると思うかい?ミラもそう思うだろ?」
「行こう、ハーマイオニー!ロンの言う通りさ!」
珍しくロンの肩を持つミラに、ハーマイオニーは頭を抱えた。ロンだけならまだしも、ミラもとなると別だ。楽しげにドラゴンのことを話すミラとロンを見て、ハーマイオニーは大きなため息をついた。
「黙って!」
ハリーが急に小声でみんなの会話を止めた。