第3章 ダイアゴン横丁
二人は暖炉から出ると、カウンターの向こう側にいた禿げたお爺さんが気付き会釈した。
「おやおや…珍しいお客さんだ、ミス・マクゴナガル」
「おはよう、トム。今日は新入生の入学用品を買いに来たのです。こちらはミス・グローヴァーです。ミス・グローヴァー、こちらは漏れ鍋のオーナーのトムです」
「…おはようございます」
ミラは小さく挨拶をしたが、トムはそんなことを気にする様子はなかった。マクゴナガルとトムは会話しているのをミラは静かに聴いていると、どうやらもう一人の付き添いが今日ここに来ると言うことがわかった。それまでの間、どうやらここで待たないといけないようだった。
二人の会話が終わると、マクゴナガルはすぐに自分の方を見た。
「会話の通りですが…もう一人の学校の職員がここに来ます。きっと貴方にとって良いと思ったからです。それに、貴方と同じ新入生も一緒に来ます」
「大丈夫です、ミス・マクゴナガル…ここまで連れてきてくれてありがとうございました」
「トムにはその職員が来たら一緒に連れて行くよう話してあります。それから朝食も用意させましょう」
朝食を二人分頼むと、壁側の二人用の席に二人は座った。ミラは店内を改めて見回してみると、飲んだくれの男がテーブルで酔い潰れ、いびきを描いて寝ているだけだった。
ミラは向かいに座っているマクゴナガルを見ると、ポケットに手を突っ込み、入れておいた不思議な鍵をいじった。
「あの…見てもらいたいものがあるんです、けど…」
「なんですか?」
「えっと…学校からの手紙と同じ日に届いたものなんです。この鍵が何かわかりますか?」
ミラはいじっていた鍵を出し、それをテーブルの上に置いた。すぐにマクゴナガルがその鍵を手に取り、四角いメガネに近づけていろんな角度から見た。そんな、まさか…と声をこぼすと、その鍵をテーブルの上に置いた。
「これは…金庫の鍵です。届いたと言うことは、何か手紙のようなものは?」
ミラは首を横に振った。
「鍵と『大切にしなさい』というメッセージカードだけでした…」
「そうですか」
一体どこの金庫の鍵なんだろうと思った。しかしやっぱりマクゴナガルに相談して、ミラは少し安心したのだった。